Dear
「あーなたにあーえたそーれだけでよかった、せーかいにひかりがみ、ち、た」

坂を勢いよく滑り降り、からからと音をたてるタイヤの音、噛みあって離れてきりきり鳴るチェーンの音、そして何より、風を切ってびゅうびゅうと流れる音が耳元でして、自分の声はよく判別できない。
世界の誰にも届いてないような気がした。
自転車の世界ってなかなかに哲学的だ、そんなことを考えて少し笑ったら、その笑い声が耳にちゃんと届いた。
坂が終わって、平坦な道に変わったのだ。ブレーキにかけていた手を緩める。
楽にしてくれてた重力はもうないし、追い風もない。少し腰を浮かせて、最初のひとこぎをめいっぱい踏み込む。
よいしょ、っと。
サドルに落ち着いて、ふと空を見上げたら、ご機嫌な満月があった。
おーい、ご機嫌な俺は迷わず手を振ってみる。

「跡部くーん」

当たり前だけれど、返事はない。
幸いなことに住宅街の道路には誰もいなかった。勿論確認済みなわけだけれど。
誰かがいても、やったかな。どうだろな。うん、俺は、今なら、やっただろうな。
見慣れた通学路である道を駆け抜ける。とにかく大通りに出よう。そこからは当分真っ直ぐ。

自転車で、ゆこう。



自然と浮かぶフレーズを拾っては、音をつける。
気まぐれな俺の思考回路は、いろんなものを運んで過ぎてゆく。
このフレーズはもう何回目だっけなんて面倒なことはもう、考えないのです。
だって、それだけ好きってことだから。うん。
きこきこ、きっ。から、からから。
学校に行くのに自転車は使わない。最寄駅までは大して遠くないし。
それに俺んちはちょっとした坂の上にあるから、不便だったりする自転車は。
部活で疲れた後に、トライアスロンよろしく傾斜45度(いくらなんでも大げさだけれど)の坂道をのぼる気力はきっとない。
だからもっぱら使うのは、地元でちょっと出かけるとき。
近くの友達と遊ぶときとか、おつかい頼まれたときとか、コンビニ行くときとか。
それくらいなら近場だし、そこ以外は平坦な道が多いから楽なんだ。
今もコンビニに行ってくるって言って出てきたわけです。

「……せーかいがひょうじょうをか、え、た、」

から、からきこきこ、か、か、か。
ペダルをこぐ速度に、口ずさんだフレーズに合わせて、リズムをつけてみたりする。
ステップを踏むように、たん、と踏み込んでひとこぎ、チェーンの音をからからいわせて逆回り、戻して1、2、3回、しゃからん、しゃからん、しゃからん。
大通りに出た。きっ、とブレーキを決める。
渡って左の方に行けば最寄り駅。交差点の道路表示をなんとなく確認して、右に曲がった。

明日は、跡部くんの誕生日だ。

今日は日曜日、ってことは明日は月曜日なわけで、俺も跡部くんも普通に学校があって、部活もある。
跡部くんは部活の後、氷帝のレギュラーメンバーだけでちょっとした誕生日パーティー(と称したいつもの集まり、と跡部くんは評する)に出るらしい。
らしい、ていうか俺も忍足くんから誘ってもらったんだけど、断った。
氷帝レギュラーの皆とは跡部くんを通じて仲良くなった。あっちも俺のことを知ってる。
けど、「氷帝のメンバーでやる跡部くんのお誕生日パーティー」に出るのは、やっぱり気が引けた。
テリトリーとか、そこまで他人行儀なことは言わないし、思ってもいないけど、でも、俺とは違う繋がりが跡部くんたちにはある。
それこそ、氷帝の爽やかな青のユニフォームの中に、まるで卓球のユニフォームみたいな(そうやって跡部くんが言うんだもの。俺も、思うけど)山吹の若草色がぽつんと一人まじるみたいなものでしょ。
それにね、そこに参加するのはいろんな意味で、ちょっと悔しい気もするから。
ちなみに夜は跡部家だけでのお食事会があるそうです。すごいね。ブルジョワだ。
フレンチレストランを貸しきってやるとか言ってたなあ。
もう、そういうのって、どうにも出来ないよね。
何かのせいにするのってつまんないって思うけど、こんな年齢じゃ家族のことにはどんなことをしたって敵わない。や、敵う敵わないの問題でもないんだけど。
跡部くんだって、めんどくさいって言ってたけど、別に家族が嫌いなわけじゃないんだ。
俺は、父さん母さん、姉貴、じーちゃんばーちゃんのことも好きだから、跡部くんが跡部くんの家族を好きだと、なんか嬉しい。
同じ、いいものを共有してるような気がするから。
だから。
友達とか家族とか大事にする跡部くんが、好き。

「きーみがーすき〜 ぼくーがいーきる〜 うえっでこれいじょーのいーみは〜 なくたあっていー」

見慣れた道が途切れる。
こっちの方は滅多に来ないな、なんて思いながら、いつも遠目に見ていた焼肉屋の横を通り過ぎ
た。
お彼岸を過ぎると秋になる、って母さんが言ってたけど、その通り。
昼間はまだそうでもないけど、夜になると大分ひんやりしてきてる。そっと風になでられた頬が冷えた。段々この空気が昼間に移ってくるんだろうなあ、そのときはもう秋だ。
そういえば跡部くんと出会って一年以上経つんだよね。
二年のジュニア選抜が確か9月頃だったから、……うわあ早い!
でもなんだかんだ言って付き合い始めたのは12月頃。
そう、だから、跡部くんの誕生日を初めて二人っきりで過ごしたかったんだ。ささやかな、夢、だったんだよね。
だって誕生日、これほど大切で嬉しい日なんて、あるだろうか。
いやない。
しかも二人っきりなんて、まるで恋人みたいじゃないですか。
……うん、恋人、です。
ブレーキにかけた手にわずかに力を込めて、スピードを落とす。
青信号がちかちかと点滅している。腕時計を確認して、ん、まだ大丈夫かな。
からから、から、か、きっ。
横断歩道の前で止まる。身体を傾けて、片足だけアスファルトに着いた。
信号が変わった。ほんの少しの間、静かになっていた交差点にエンジンの音がまた轟く。
ゆっくりと発進した、二人乗りのバイクが前を過ぎていく。
ぼんやりと目で追っていると、俺が来た方向へ折れていった。
ぐいーっとスピードを上げて、夜に映える赤いテールランプはすぐに見えなくなる。
恋人かな。
……俺と跡部くんの関係は、世間に声を大にして言えるものじゃない。
それでも、跡部くんは俺の恋人。俺の、大切なひと。
今流行りの小説みたいに、世界の中心でその愛を叫ぶことだって出来るけど、みせびらかしたい想いじゃないから、そんなことはしない。
でもさでもね、君のこと、何度だってかき寄せてみたいじゃない。
その日ぐらい、せめて世間の恋人みたくさ。
だけど俺も君も、自分の我儘だけを通すようなコドモじゃないもの。
次は俺の誕生日だってあるし、来年にもチャンスはある。
一年に一度、ちゃんと君にも俺にもそれはやってくる。
それにちょっと遅くなっちゃうけど、9日にお祝いしようって約束してあるんだよね二人っきりで。
そういう約束が出来ただけでも、感謝だよね。俺ってラッキー!
そうそう、うん、なんかすっごく楽しみになってきたぞ。
うんいいね、だってそう、恋人みたいじゃん!

「かわいいきみをつかまえた〜 とっておーきのうそをふりまーいて」

ぱち、と俺と目が合った瞬間に、信号が青に切り替わった。いいねえ、なんかこう風が向いてきた感じ? あれ違う?
まいいや、せーの。
で、深くペダルをこぐ。
いえーい!
立ちこぎで急発進。一気に行っちゃうよ。
さてさて君と二人っきり、初めてのお祝い、何用意しよう。
小さくてもいいから、ホールのケーキでしょ。クラッカーでぱーっと派手に演出しちゃおうか。
プレゼントは俺、なんて嘘嘘、ちゃんと用意してます。いや、俺、も言ってみるつもりだけどね一応。勿論殴られるの覚悟。
身体を張った愛もプレゼント、なんつって。

「イエー!」

口に出してちょっと叫んでみた。ぷはっ、ってこみ上げてくる笑いが止まらない。
ねえ跡部くん。
すごいよ君。すごいよ俺。
俺さ、君のこと考えるだけでこんなにも嬉しいよ楽しいよ。君のことすっげえ大事だよ。
君のこと、好きだよ。
本当のこと言うとさ、君の15歳の誕生日は一回きりしかないから、しつこいけど、本当に残念だって思った。
ちくしょーこんにゃろーって誰にってわけじゃないけど、悔しかった。
パーティーの話を俺にしたときさ、悪いなって言ったでしょ。
困ったみたいに笑って、君も俺みたいに残念に思ってくれてるのかなって思ったら、思ったらさ、なんか苦しかったよ。
氷帝メンバーと盛り上がってるカラオケルームに飛び込んで連れ去ろうか、君の家で待ち伏せして黒塗りの高級車に乗り込む前にさらっていこうか、ほんとはそんなことも考えた。
けど、他にも出来ることっていろいろあるだろ。もっといいこと、君を、笑わせられること。
なんたって俺はラッキー千石。自分にも運を呼び込むけど、君にだって幸せを運びます。
そう、俺がね!

「ばんざあ〜い! きみにーあえてよかった〜 このままずうっと〜ずうっと〜しぬまではっぴー!」

お。
見覚えのある交差点。渡らずにそのまま右に折れて、住宅街に入る。
ここら辺はもう何度も来たことがあるから、迷うことなんてない。ペダルをこぐ足に力が入る。
速く速く、ぐるぐるぐるぐる。
ぐいぐいぎこぎこ。かしゃんかしゃん。
まるで坂を下ってるみたいな心地になる。わくわくしてる心臓の鼓動が、重力代わりの俺の追い風。
跡部くん、俺は君の白馬の王子様です。
現実は白馬じゃなくて、赤い自転車に乗る王子様なんだけどさ。
いつか君を後ろにのっけて海でも行こうか。黙って攫われてよねそのときはさ跡部くん。
うん、またいいこと思いついちゃったな。
君とのこと考えてると、きらきらふわふわ、そういうので頭がいっぱいになる。
どんどん君を好きになる。こわいくらいに、好きになってる。
君の気持ちお構いなしに、想いが募るよ。
跡部くん、君、俺に好きにさせてばっかりだ。ずるいな、なんて思ってないけど。ほんとはちょっと、思ってるけど。
でもいいよ。
俺、君のことの好きなんだ。
もっと俺に、君のこと『好き』にしていいよ。
その代わりっていっちゃなんだけど、俺は君に、『好き』を伝えるのを躊躇ったりしない。
俺の想い、全部持っていっていいよ。君の好きにしていいよ。
好きなんだ、愛してるんです。君のこと。
コドモじゃないけど、この加速度は今だから出せるものだって信じて疑わない。

だから君に、会いに行くよ。



こつん、こつん。

ぴくっと身体がその音に反応した。
クローゼットの戸をそっと閉めて、手を止める。
窓?
一応そちらを振り返って凝視したが、何も変化はない。
首を傾げると、手にしていたスーツをハンガーにかけた。ネクタイもシルバーグレーのを選んで一緒にしておく。
パーティーなんて久しぶりだ。
部活で忙しいことを理由に、なるべくそういったことは避けてきたが、落ち着いた今は理由にするものがない。
しかも一応、自分のためのパーティーだ。
所詮は、親や親戚たちの社交会なのだけど、両親や祖父母を始め、自分のことを心から祝ってくれる人がいるのは確かで、大勢の人と嬉しいことを共有しようというその精神は、まあそれなりに良いものだ。
かしこまった振る舞いや装いじゃなかったらもっと良いけれども。
…………つまんねえの。
息を吐いてベッドに腰かけた。頭をかく。

明日は、自分の誕生日だ。

千石と、一緒にいることの出来ない誕生日、だ。
学校帰りはレギュラーメンバーとのパーティー、夜は親族たちとの食事会がある。
学校は違う、家も離れている。会う時間は取るのは難しい。
無理に平日に時間を取らないで、土曜日にゆっくりお祝いしようと千石に提案されて、了解した。
納得した。
つもりが、まだ心がもやもやしている。
女々しいと自分でも思うけれど、やはり一緒にいられたら、良かった。
自分の誕生日を今まで有り難がって過ごしてきたわけではないし、世間一般の恋人たちのイベントとして楽しみなわけでもない。
でもあいつは、そういうイベントを喜ぶ方だし、とても楽しそうにする。
もうすぐ俺の誕生日だっていう話をあいつがしたとき、すごく、嬉しそうで、なんで俺のことでそんなに喜ぶんだって俺は言ってみた。
…………やめた。
思い出すのも恥ずかしい。
とにかく、あいつは幸せそうに笑ってた。

そういう千石が俺は、好きだ。

こつ、
こつん、……こつん、

ん。
さっきと同じ音だ。硬いものに何か小さいものが当たるような。
同じ場所、窓に目をやる。

こつん。

「・・・・・・何だ・・・・・・?」
小さな丸いものが、窓ガラスに当たって落ちた。
外から投げられたとしか考えられない。
こんな夜中に一体誰だ? いや誰とかいう以前に、人の家に物を投げ込むのは犯罪じゃないのか。
いたずらかもしれないし、もう犯人は逃げたかもしれない。
けれど俺はなんとなく息を潜め、ゆっくりと立ち上がると、そっと窓辺に近づいた。
庭の木々がじゃまして道路がよく見えない。
少し躊躇ったが、そっと窓を開ける。
そして顔を覗かせてみると、先程よりは道路が見渡せた。
暗い夜道に人通りはない。

…………自転車?



「あっとべくーん」

「せ、千石?!!」
あまりに唐突な事態に、跡部は声を大きくしてしまった。
跡部の部屋の下、庭を囲った塀の外、数少ない街灯がわずかに照らす夜道に、赤い自転車にまたがった千石が笑顔で手を振っていたのだ。
勿論跡部が千石を呼び出したわけではない。
ぶんぶんと大きく両手を振る千石に、跡部は少し頭痛を覚えた。どうやら夢ではないようだ、と思う。
「……、お前、夜中に人様の家の下で何やってんだよっ!」
「しーっ。跡部くん声大きいよ、ご近所迷惑だよ」
声をひそめて人差し指を立ててみせる。
お前が言うかそれを、と跡部は思いつつ、一応適切な注意だったので、ひとつ息を吸い込んで気持ちを落ち着かせた。
千石がその様子を見て、優しく目を細める。
「あっとべくーん、あのさ、」
「ちょっと待て」
「えっ」
跡部が突然部屋の中に引っ込んだ。声をかける暇もない。
しかし千石はすぐに、跡部が何をしようとしているのか予測がついた。
笑みを零すと地面を軽く蹴って自転車に乗る。
から、から、から、から、……
ゆっくりと走らせて跡部邸の表に回り、塀に自転車を寄せて止める。一段飛ばしで門前の階段を駆け上った。
きいっと小さな音を立てて、玄関のドアが開く。跡部が辺りを見回しつつ現れた。
胸の高さぐらいある門に寄りかかって千石が手を振ると、気づいた跡部がそっとドアを閉めて小走りにやってきた。
「ったく……、お前こんな夜中に、……自転車で来たのか?」
跡部と千石の家は同じ沿線上にあるが、駅3つ分離れている。
自転車でその距離を行くとなれば、1時間近くかかるはずだ。
門の上部に跡部が手をかけた。それに気づいて、千石はその手に自分の手を重ねる。
跡部はちらりと視線を落としたけれど、何も言わなかった。
「意外にね、遠くないんだよ。ほら、この間も来たことあったでしょ?」
「そうだけど、……気をつけろよ。中学生なんだし補導されたら、困る」
「うん、ごめん。気をつけま」
千石が言い切る前に、跡部は、門にかけた手の力をもって背伸びした。身を乗り出すようにして、唇をさらう。
そしてそのまま千石の肩に額を預けた。
「……不意打ちの、仕返しだ」
「それ、素敵すぎて不意打ちじゃないよ?」
くつくつと千石が笑う振動が、跡部に伝わる。その振動が心地いい。
「それで、お前何しにきたんだよこんな夜中に」
「えーとね、それはね」
とそこで、千石は首を動かして腕時計を確認した。うん、ぴったり。
黙った千石を不思議に思ったのか、跡部が頭を持ち上げて上体を起こした。
にっこりと、千石は跡部に微笑みかける。跡部は、わずかに首をかしげた。
ピリリ、と千石の腕時計が小さな電子音を鳴らす。
千石は手を跡部の目の前に掲げて、淡いブルーの蛍光色に光る文字盤を跡部に示した。

「跡部くん、お誕生日おめでとう」

千石の嬉しそうな笑顔と、ぴったり10月4日の午前12時をさした時計を、跡部は見つめた。
「二人でお祝いする日、ちゃんと決めたけど、明日、じゃないや、今日会えないって分かってるけど、君に一番最初と最後に、おめでとうって言うのは俺がいいって思ったら、いても立ってもいられなくて」

君に、会いにきたよ。

そして千石は、プレゼントそのいち!と跡部の唇を攫い返した。
えへへ、と千石が頬を緩める。
跡部は目をぱちぱちとさせていたが、やがて吹き出すと目に涙をためて笑った。
「お前の、そういうところ、ほんと、」
息も切れ切れに最後はささやくようにひとつ付け足す。
うん俺も大好き、と千石は答えると、ゆっくりと跡部をかき抱いた。
「跡部くん」
「何だ」
「おめでとー」
「……ありがとう」
お礼を言われなくても本当に千石は嬉しかったのだけれど、言われたら、てっぺんにいるみたいに嬉しくなったので、千石はこっそりと跡部の耳元で約束を誓った。

今日の終わりも、君に会いにゆくね。

すると跡部は、ばか、と困ったように少し息を詰まらせて呟いただけで反対も賛成もしなかった。
こういう跡部のことは、千石はよく分かっているつもりだ。常識に照らし合わせていたり、千石の身の心配をきっとしている。
嫌だって行っても行くからね、心配しないで、と千石は告げ、夜の空気を吸い込んでさらりと冷えた跡部の髪に頬をすり寄せる。
跡部は本当に小さく返事を寄越し、待ってると答えると、千石の背に回した手で、きゅっと服の端をつかんだ。
千石の肩口がじわりと温かかった。
尋ねる代わりに、千石は跡部の背中を優しくさすった。
ほんの少し、喉の奥が痛かった。気づかれないだろうか、そんなことを思いながら、千石は何度言っても足りない気持ちを呟いた。

「お誕生日、おめでとう」



fin.
千石一人称→跡部一人称→三人称と、ページが切り替わることなく進むので読みづらいかもしれません。ごめんなさい〜
今年も、また跡部の誕生日は平日ですね。会えないのかな、それともまたこうやって会いに行くかな。作中でも言っていますが、千石はほんとイベントが好きそうなので、是非二人だけで誕生日会でもやるといいと思います。
さて、何を書こうか、とふとカレンダーを見上げたら、4日は平日。あら、部活があるし会えないじゃない、なんて思ったのが始まりでした。
せんべの魅力のひとつだと私が考えているのは、彼らが大人ではないということ。
ときに、現実に硬直し、ときに、都合とか理屈とか蹴り飛ばす、大人ではない、ということが、刃にもなり救いにもなると思っています。
だから千石に自転車で会いに行ってもらおうと思いました。(笑)
そうしたら以前オススメして頂いた曲の中に、自転車の素敵な曲があったのを思い出して、『星のラブレター』という歌詞を引っ張り出し、何回も読みました。ああ終わらないって焦ってたらいつのまにか、私がそのとき聴いてた歌を千石が歌ってくれました。
跡部、千石が夜中に突然来たら頭ごなしに怒っちゃったりしないかな、なんて思ってたのに、どうやら余計な心配だったみたいで、嬉しい気持ちをきちんと零せる子でした。ふたりとも、ありがとう。
跡部、お誕生日おめでとう!
また今年もおめでとうが言えて、わたしは結構嬉しいです。
哲学ではないけれど、君と、千石は一体どこからどこへ行くつもりなんだろう、と常々考えてる。
きみのことを考えている。
途方もないことだとよく思うのだけれど、それくらい深く、まるできみが人間であるかのように、きみのことを考えられたなら、それはわたしの身勝手な“きせき”となって、わたしは何も後悔することなんてないんじゃないかと思う。それもまさしく、わがままなんだけれど。
まだ、一緒に走らせてくれると嬉しいなあ。あと一年くらいは。
きみにまたおめでとうと言えるように。

2005.10.4
This fanfiction is written by chiaki.