片星の貴方、約束は彼方
星に願いを、それもいいけれど。
その小さく呟く願い事を、今夜は目の前の俺に全部話してよ。
どうせ託すなら全部俺に。

曖昧でもあやふやでも良いよ。夜が明けるまで話をしよう。
その願いの届く先を二人で、話そうよ。



「星でも見に行くか」
きょとんとした千石に、なんだよお前が前言ったんだろ、と跡部はわずかに呆れたような顔をした。
「勿論覚えてるよ!」
ぶんぶんと力強く何回も頷いた千石は、小躍りしたいくらいに嬉しかった。
それこそ小さく呟いた願い事を、跡部はちゃんと覚えていてくれたのだ。
確かまだ桜も咲いていない季節で、公園で獅子座流星群の話をしたんだと千石は思い返す。
「でっかいのが見たいって、跡部くん言ってたね」
「言ったな」
不意に建物の影から覗いた夏の太陽に、跡部は目を細めて言った。
「実はさ、俺ちょっといろいろ考えてたんだ」
何を、というふうに額の上に片手をかざし、日差しを遮りながら跡部は千石を見やる。
太陽の光を背後に受けている千石の顔は影が落ち、色素の薄い髪は逆に透き通るように輝いていて、
綺麗だな、と跡部は思う。
うんと千石は返事をして、
「跡部くんと星を見に行く計画をね」
と話し始めた。
「俺が前に話した流星群のときは、結構規模が大きかったからニュースになったけど、
実は流星群って普通に夏の間とかに見れてさ、8月とかにも機会があるんだ。
でもテニスあるからちょっとお互いの予定が合わないかもしれないでしょ」
「だな」
「だからさ、お試しっていうかまずその雰囲気をってことで、
近々七夕があるからそのときに星でも眺めませんか」
「七夕にか?」
また建物の影に入って、日が翳った。
「うん。今年の七夕は晴れるっていうし、七夕に星を眺めるのってなんだか情緒があっていいよね。
日本の夏って感じ。笹飾って短冊書こうよ」
「お前の家? それとも俺の?」
すかさず、了承したとしかとれない質問が飛んできて、千石は目尻を下げて笑う。
軽くスキップするようなステップを踏んで、うーんそうだねと楽しげに言った。
跡部は軽く首を捻り、何か考えていたようで、やがて千石に目を合わせると、
「じゃ俺の家な」
と告げた。
いいの、と千石が尋ねると、その日父親も母親もそれぞれいねえしと跡部は答え、最後に、
「お前の家で見るのは本番にしておく」
と鮮やかに微笑んだ。
抱きしめたいな、そう千石は思ったけれど往来だったのでぐっとこらえる。
この想いもとっておきにしておこう。
心に仕舞って、代わりにへらっとさらに表情を崩す。
「七日は土曜日だから・・・・・・、えと、六時くらいには行けると思う」
「泊まっていくだろ」
「うん」
「分かった。伝えとく」
話の区切りがよいところで、ちょうど分かれ道にさしかかった。
学校帰り、適当なところで合流し他愛もないことを話して帰路につくというようなことを、たまにしている二人だが、今日は用事があるとのことで、千石の家の最寄り駅に跡部もやってきていた。
何の用事?と尋ねた千石に、跡部はそれはもう面倒くさそうに、面倒な用事だとそのまま答えたので、
家庭の用事なんだろうなあと千石は予想をつけ、それ以上は何も聞かなかった。
「ではでは七夕にお迎えに上がります、織姫殿」
と少々ふざけて礼をしてみせると、跡部は目を瞬き、そして顔を上げた千石の額をぴんと弾き、
「どうでもいいけど、晴らしてみせろよ?」
と試すような目をし口の端を綺麗に上げた。
「それはもう、ラッキー千石ですから!」
どーんと任せて!と胸を叩くと、跡部は声を立てて笑い、左の道へ折れた。
またね、と千石がその後姿に声をかけると、くるりと振り返り、
「牛連れてこいよ!彦星!」
と楽しそうに揶揄し、片手を一回上げて行ってしまった。

残された千石は、そういえば彦星って牛飼いだったっけと考え、
・・・・・・牛肉じゃダメかな、と行き着いたところで一人吹き出しそうになった。



テレビ画面の浴衣姿のお天気キャスターが、今日は織姫と彦星が出会えそうですね、と言うのをちらっと千石は目にして、そうです俺も会いにいくんですよ織姫に、なんて心の中で呟いて、いってきまーすと元気な声を残し自宅を出た。
外に出た途端、夏の熱気が千石の身体を包む。青空を見上げる。
わずかに雲が残っているが、それも夜までには拭い去られるらしい。
本当に晴れの七夕となりそうだと、千石はわくわくする心を抑えきれずに、軽やかな足取りで駅へと向かった。

跡部邸に着いた千石は、意気揚々とチャイムを押し、門をくぐり、玄関前の階段を上ってなんとなしに庭の方へ目をやった。
跡部の家は、門から入って左側が広い庭になっており、海外の別荘でしか見たことのないようなプールがあった。白いタイルに囲まれたその奥は芝生になっていて、春先にその木陰の下でピクニックもどきのことをしたこともある。
庭はちょうど大きく窓の取られたリビングに面していて、中から見る庭の風景はそれこそ芸能人のお宅拝見みたいだと千石はいつも思う。
その庭の一角、芝生のあたりからそびえるそれに千石の視線は釘付けとなった。
かちゃりと鍵の下りる音がして、跡部が玄関から出てきた。それに少し遅れて気づいた千石は跡部の顔を見、
視線を奪われた方向を指差した。
「・・・・・・跡部くん?」
とまどいが表れて、やたら語尾の上がった口調になる。
そんな千石の様子を窺って、跡部は小さくため息混じりに話した。
「俺じゃねえよ・・・・・・
今日お前が来るって伝えたら、今日が今日だろ、石岡が気を利かせて用意したんだよ・・・」
石岡とは、跡部の家の執事だ。白髪の、温和だけれど機敏な人で随分前から跡部家にいるらしい。
その有能な執事が今夜来る客人と家人のために用意したのは、大きな笹だった。
三メートルはゆうにあるだろうと思われるそれは、色紙で折られた飾りやカラーテープを綺麗にまとっており、
短冊もすでにぶら下がっている。
「あちゃー・・・じゃあこれ必要なかったなあ」
と頭をかきつつ、千石は片手に握られた一メートル弱の花屋で買ってきた笹を見下ろした。
綺麗に飾り立ててもどうしたってあれには負けるだろう。
そんなことを考えているとひょいと跡部がその手から笹を受け取った。
「一緒に飾ればいいだろ」
言うなり執事を呼び、あっという間に飾り立てられた笹のある支えに結び付けさせた。
その様を跡部は見つめながら、ぽそりと口を開く。
「・・・悪かったな」
自分にかけられた言葉だと気づいて、千石はえ?と跡部の横顔を見た。
小さな声で跡部は続ける。
「お前が笹持ってくるだろうなって思ってたんだけどよ、
気づいたらもう石岡が張り切って用意してるところだったから」
使用人総出で何やら楽しそうだったらしい。
それでは跡部もいらないとはさすがに言えないだろう。
悪い、と最後にまた跡部は付け加えた。
千石は、玄関から出てきた跡部の顔が何やら気まずそうだったのはそのせいだったのかと思った。
気にしなくていいよと千石は笑う。
「跡部くんは何書いたの?」
大きな笹に揺れる短冊を見つめて、千石が尋ねた。
跡部はその千石の視線の先を見やり、千石に視線を移す。
「あれは家族と、石岡のとか使用人のやつだ。
母親なんか年甲斐もなくうきうきと願い事書いてた。父親は父親でちゃっかり二つもな」
そう話す跡部の表情や口調はどこか楽しそうだ。
使用人たちには飾りつけが終わったときに、好きなように書くよう跡部自身が言ったようだった。
「俺は、お前のと一緒に書けばいいと思ってよ。あっちのと、お前のと、それぞれな」
跡部が言い終えたところで、千石が目を伏せ洩らすように笑ったので、跡部はふと首をかしげた。
「何だよ」
「や、うん、俺跡部くんのそういうところ、好きだなあ」
千石は片目だけつぶって言った。好きなひとの好きな部分に触れて、くすぐったいような感情が胸を温かくする。
目をぱちくりさせほんの少し照れた様子で、跡部はとりあえず中入れよ、と促した。
そして、
「・・・お前、またしてもすごい荷物だな」
と改めて千石の出で立ちを確認し、えへへと笑う千石を招きいれた。


どすっと結構な重さを感じさせる音を立てて、跡部の部屋のフローリングに荷物が置かれる。
まずは、と前置きしてバッグを開けた千石が、向かいに腰を下ろした跡部に差し出したのは、飾りつけ用に持ってきた折り紙と文房具だった。
これは跡部も、笹を持ってくるくらいだからきっと持ってくるだろうと予想していたことだったので、
黙って受け取ってローテーブルに放る。
けれど次のはまったく予測できないものだった。
千石は上目遣いに跡部を見、スポーツバッグを大きく開けて両手を中に突っ込んだ。
そうして抱えられるようにバッグから姿を現したのは、深緑と黒の縞の、スイカだった。
「母さんに、お世話になるんだから何か持っていきなさいって言われてね、
何がいいかな〜って考えたんだけど、駅前でこいつと目が合ったからこれにしちゃった」
いたずらっぽく笑ってスイカをぽんと叩くと、響いて軽く太鼓の鳴るような音がした。
跡部は、よくもまあこんな大きなものを詰め込んで、肩に背負ってやってきたものだと、床に仰け反って腹を抱えた。
「お気に召してくれたようで。さーて、跡部くん、飾りつけ作っちゃおうよ」
千石は笑い転げていた跡部の手を引っぱって身体を起こさせると、ローテーブルについた。
「何折るんだよ」
と、くるっと身体を向けて跡部もローテーブルを目の前にする。
「そうだなあ、っとそうそう! 俺跡部くんのために覚えてきたんだよー」
持っていた青の折り紙を横に押しやり、代わりに白の折り紙を手にした千石がいそいそと何やら折り始めた。
跡部がその様子をじっと見詰めていると、千石は出来上がったそれに黒のサインペンで適当に斑を描き、
「はい! 牛持って参りましたー!」
と折り紙の牛を跡部の前にちょこんと置いた。
なっかなか可愛いでしょ、と得意げに訊く千石とその自信作を交互に見比べた後、
跡部はテーブルに突っ伏して肩を震わせたと思うと、顔を少しずらして千石を見上げ、
「お前、バカ、」
と涙を浮かべ、喉を鳴らして笑った。



そんなこんなですっかり日の落ちた空の下、
跡部と千石は短冊もつけ終えてプールサイドのベンチに腰を下ろした。

プールの水面を走って時折抜ける風は、丁度よい涼しさを伴っていて心地よい。
二つの笹が揺れてさざめき、リビングがら漏れる明かりに、飾りの色彩が煌く。
晴れた夜空には星が散らばっていた。
「ラッキー千石の本領発揮じゃねーの」
「でしょ〜」
前に足を投げ出した千石が両手を後ろにつき、からっと笑って空を仰いだ。
同じ格好で跡部も見上げる。
「天の川ってどこかなー」
「・・・・・・何だよお前肝心なこと知らねえのかよ」
それこそちゃんと調べてこい、とため息をこぼして跡部は首だけ千石の方に向けた。
今度は千石が跡部と同じ格好を取る。
「星の多いとこが天の川?」
と千石が疑問形で提案してみると、跡部は優しい表情で、まあそれでいいけど、と呟いた。
そうやっていつもと同じような会話をしながら、時々思い出したように夜空を眺めていると、
「あら風流ねえ」
と柔らかく上品な声が馴染むように響いて、跡部と千石はその方を振り返った。
声の主は執事に助けられながら杖をついて、リビングから庭へ降り立つ。
「おばあさま」
跡部は立ち上がると駆け寄って、執事とその役目を代わった。
千石もその場に立つと、こんばんはおじゃましてます、と微笑んで挨拶をした。
跡部家は父方の祖父母と一緒に暮らしおり、千石は既に何度か会ったことがあった。
跡部の祖母はいつも綺麗にしていて、ご婦人と呼ぶに相応しい。
おっとりと上品な口調で、口元にはいつも笑みをたたえ、優しいおばあさまといった印象だ。
良い夜ね、と軽く首をかしげて千石に笑いかけると、その目元がくしゃくしゃになってかわいらしい。
「大丈夫ですか」
二人で手を貸して、祖母をベンチに座らせる。祖母を真ん中に、跡部と千石で挟む形となった。
跡部は基本的に家族といると丁寧な物言いをするが、祖母といるときが一番その話し方や態度がとても柔らかいものになるのを千石は知っている。
小さい頃から仕事で忙しかった両親に代わって、自分を育てたのは執事の石岡と祖母だと、ふと跡部は千石に洩らしたことがあったのだ。
その跡部は祖母と何やら話をしていた。
よく似ている優しい目だ、と千石は思う。
「二人ともお願いごとはもう書いたの?」
「ええ」
「何て書いたのかしら」
「おばあさま、願い事は他の人に話したら叶わないものなんですよ」
柔らかく、跡部は笑いを含んだ声で話す。俺にも見せてくれなかったんです、と千石が言うと、祖母は鈴を転がすように笑って、
「あら、じゃあ私も秘密にしておかなくてはだめね」
と口元に人差し指を当てた。
「珍しく、七夕に晴れましたね」
跡部が空を見上げて言った。祖母も目をやる。
「そうね・・・・・・ でも織姫と彦星にとっては、天気は些細なことでしかないかもしれないわね」
その方が幸せだわ、とゆっくりとした調子で話した。
「どうしてですか」
千石が祖母の顔をのぞきこむようにして尋ねる。
「晴れていれば私たちからは天の川が見えるけれど、
曇っていたら、雨が降っていたら、私たちから星は見えないでしょう。
けれどね、雲の上ではいつだって星は輝いているのよ。
私たちに見えても見えなくても、いつでも星はそこにあるの」
そこで祖母は一区切りすると、目を伏せた。思い出に浸っているように、跡部と千石にはみえた。
「地上のことなどお構いなしに、二人はきっと逢瀬を重ねているのだわ」
ちょっとくらい曇っている方が私たちに邪魔されなくていいなんて、思ってるかもしれないわね、と言って、
またころころと祖母は笑った。
跡部と千石は顔を見合わせると、つられるようにして微笑んだ。


それから祖母と夕食をともにし、冷やしておいたスイカをまたプールサイドで並んで食べ終えたたところで、祖母は寝室へと戻っていった。
あとは二人で適当に寝るからと、跡部が執事をはじめ使用人たちを引っ込ませると跡部邸は急に静かになった。
リビングの明かりは窓際のランプだけ灯し、跡部と千石はというと、芝生にいた。
用意のいい千石が持ってきたレジャーシートを広げ、小さな懐中電灯をひとつ置いて、二人は仰向けに寝転んでいる。
人口の光が減ったこの時間、夜の色はますます濃くなり、小さな星たちもいっせいに輝きを増すようだった。
金や銀の光が自分の視界の黒に美しく映える。その切り取られた視界に、枝垂れかかる笹飾りがふわりと舞っては消える。
きらきら星の歌がちらりと思い出されて懐かしい。
目を閉じると、風に撫でられたプールの水がちゃぷんと優しい音を立て、
かさかさと笹と笹飾りが擦れるような安らぐ音を奏でるのが耳に届く。
そしてそっと跡部が目を開けるとそこには、揺れる笹と吸い込まれそうな星空ではなく、
影の落ちた千石の顔があった。
寝ちゃったのかと思った、と千石は言うと、跡部の視界から去って、また隣に寝転んだ。
跡部は身体をひっくり返してうつ伏せになると、少しだけ上体を起こして、片肘をつき顎をのせた。
ん、と目で見上げた千石を見つめる。
「お前何書いた」
暗闇の中、声は自然と小さく囁くような大きさになる。
千石はひとつ瞬くと、可笑しそうな表情をし身体を捻って横を向いた。
「人に話したら叶わないって言ったの跡部くんでしょ?」
左手に頭を乗せ跡部を見やる。そうだけど、と言った跡部は笹の方を目の端の映した。
「・・・どうして七夕に願い事を書くんだろうな」
「うーんどうしてかな。人の幸せにあやかろうっていうあれかな」
「幸せか? あの二人」
年に一度しか会えない二人のどこが幸せなのか、というふうに跡部は訝しげな顔をする。
そうだねえ、と千石は呟くと、身体を倒してうつ伏せになった。両肘をついて顎を支えると、何気なしに正面を見つめた。
「跡部くんのおばあちゃんの話が本当ならさ、結構幸せなんじゃないかなって思ったんだよね俺。
曇りだったり雨だったりしたら会えないっていうんだったら、可哀想だけど、
地上には関係なく、一年に一回、天上では毎年ちゃんと出会えているならだよ、
以前もこれからも、必ず会えるんだったらさ、そんなすごい絶対の約束ってないなあって」
そこで千石は跡部を見て、小さく笑った。
「もしさ、あ、もしもの話だけど、いい?」
気づいて千石は話すのを中断した。してもいいって言ったろ、と跡部は手を伸ばして千石の頭を小突く。
目を細めて頷くと千石はまた口を開く。
「あのね、もし、俺が先にいなくなっちゃたときにね、えと逆でもなんだけど、
跡部くんがもし先にいなくなったりしたときにさ、勿論俺はいつでも君の傍にいるつもりだけれど、
その、向こう側にいったときも、一緒にいられればいいなあって思うんだよね。
一緒のところに辿り着いたらいいなって思うんだ」


だから、織姫と彦星みたいなそういう絶対なら、あってもいいなって思うんだよ。


祈るように千石は言うと、黙り込んだ。
跡部はなんとなく、きっと千石は今話したようなことを短冊に書いたんだろうと思った。
沈黙を引き継ぐように、千石の頭をひと撫ですると、
「この世界はお試し期間なんだとよ」
と前置きして、跡部は瞼を伏せがちに話した。
「お試し期間、っていうと言葉が悪いかもしれないけどな、
この世界は、お前の言う向こう側の世界でも一緒にいたい人を探すための場所なんだって。
永い永い時間をずっと一緒に過ごすための」
そうどこかの本で読んだ、と言い終えると跡部も黙る。
そっと駆け抜ける夜気が微かに二人の髪を揺らす。触れるような優しさに跡部は目を伏せた。

もう決まってるといいな、と跡部が独り言のように呟いたので、千石はそうだね、と返事をした。

両肘をついたまま、千石が跡部に顔を近づける。
リビングから届く仄かな暖色の光が、跡部の顔を照らす。
一瞬跡部は目を開けたが、千石は、すぐに睫毛の影が落ちたのを目に焼き付け、自分も目を閉じて唇を重ねた。
そして、こつんと額を合わせる。

「一緒にいたいなあ」
この願いは、向こう側へ届いただろうか。



fin.
えっと、計ったわけではないのですが、ちょうどこのSSが当サイト20作目のものでした。(驚)わーびっくり! ええーそんなに書いたんだ・・・・・!わー!わー!すごいなあ。今一番自分が驚いてます。
今回このSSを書いていて、「積み重ね」という言葉を思いました。ちらほらと、今まで書いてきたSSの設定が出ているのです。本の方からも持ってきてたり、そういえば跡部が「どこかの本で読んだ」と言ってることは、私がずっと前に書いたものから持ってきたものでした。
書いているうちに自然とぽつぽつ浮かんできて、なんというか、私もですが、跡部と千石も前に進んでいるんだなあと感じてとても嬉しかった。
「生きてる」んだなあって思って。フツーに嬉しかったのです。ちょっとこう、漠然としたものがふと形を現してくれた気がして。
一緒にいたいね、なんていう願い事は、星に託すものじゃなくて、呟いて囁いてしまいには叫ぶものだろうなあと思う。
私は基本マイペースで、それは悪く言うと、気まぐれなわけですが、そんな私が、や、自分で思うだけですが、短期間で結構書いたんじゃない?って思えるくらい頑張れたのは、HPを通して、作品を通して、お言葉をかけて頂いたりして知り合えた方々のおかげだなあと思います。
いろいろともう少し積み重ねていこうと思います。まだまだお付き合いくださると幸いです!

2004.7.20
This fanfiction is written by chiaki.