だから、全部覚えていよう
 人は、どこまで認識できるだろう。
 白い紙に縦書きされた文章の“認識”の二文字が、そわりとシールのように端からめくれて浮き上がる。芯をなくしてぐにゃりとたゆたうその黒の線を、俺はつい、とペン先でつついてみた。するするとほどかれて、4つのひらがなに姿を変える。ひとつひとつを見ればそれはもう単語でもなく、そのものであった意味は失われる。にんしき。漢字に変換しなかった文字は、俺の小さなため息にすげなく吹き消えた。
「……ん」
 ぱたり、と手にしていたペンが赤を入れていた原稿の上に転がって黙り込む。気づいて、俺はようやく顔を上げた。ペンを放ったまま首を巡らせると、横には3つ下の後輩が立っていた。柔和なこなきじじいみたいな顔をして。
 もう何度呼んだことかといったふうな呆れと焦りの少々含まれた声。ああ悪い、ちょっと上の空だった。
「どうした」
 尋ねると、大変です、とさっきと同じ表情のままでそいつは答える。元々眉の下がった顔はいつでもそう見えて、一面を差し替えるような一大事でも職場のトイレの故障でも同列に語ってみせるから表情はまったく当てにならない。少し言いづらそうに口ごもるのを、どうしたよ、となるべくやさしく促してやる。
 天井からぶら下がる報道部のプレート。薄い雲を引き伸ばして太陽の明るさが透ける白っぽい空の覗くブラインドからは、冬の日らしい穏やかな日差しが差し込み、空調も控えめだ。島を作る並んだ灰色の机たち。どこも多少程度は違っても乱雑なことに変わりはなくて、雪崩を起こしかねないほど積み重なった紙束の山、絶妙なバランスでお互いを寄りかからせ保たれている本とファイルの本立てに、DTPソフトの原稿画面を映すつけっぱなしのデスクトップ。
 大きな一報の入っていない今日は平穏で、そこそこ人は出払っているけれど電話も少なく落ち着いている。小さな地方新聞社の日常はこんなもんだ。
 さっき電話がありまして、と後輩。
「もしかして昨日のあれ?」
 あれとは、と首を傾げる。一緒に仕事をし始めて数年になるけれど、こういったところがいまだに通じない。比べるわけじゃないのだけれど、あいつだったらそれですの一言と小さく口の端を上げてみせて、すんなりと話が進むんだろうなと考える。まあ、こいつがあいつになれるわけがないんだけれども。
あれと言ったらあれしかない。それにこういうときの俺の勘はたいてい当たる。落としたペンを手探りで拾って、たん、と立てる。
「広告主からの苦情」
 当たっていいことはない。けど、当たりだろ。
 はい、とさかんに後輩が首を縦に振って、どうしましょうと俺の顔を窺った。島から離れた空っぽの机を何となしに振り返る。朝イチで部長と自分の二人で出向くつもりではいたのだ。記事と広告の並びには気を遣う。昨日は土壇場で記事の差し替えがあって、もう輪転機を回さないといけないぎりぎりの時間まで紙面をいじっていたのだけれど、広告を外すわけにもいかず少々厳しい状態での発行になった。苦情が来るだろうということは予想していた。電話が来る前に訪ねれば幾分心証も違っただろうけれど、もう遅い。正直、気は重い。
 頭をかいて考え込む俺を、どうしましょう、を繰り返して後輩が見る。そうして多分また返事をしない俺を何回か呼んだ。その1回に、俺はあいつの声を想像してみる。
 黒尾さん、とあいつは呼ぶ。
 最初に出会ったとき、思ったよりも低い声だと感じた。穏やかで、冬の凛とした空気のひそむそれを、好きだと思った。
 くろおさん、とあいつは呼ぶ。
 多分、呼ぶのが好きなんだ。毎日呼ばないことなどないのに、ときどきあいつは呼ぶこと自体を楽しむようにする。
あの声に、抑揚のつけかた、含まれた感情、それらがないだけで自分の名前が少しかたちや色、意味を変えるように思うのはなぜだろう。別物のように文字の並びのそれでしかない、はおおげさだとしてもあいつに呼ばれたら、振り向かない、そういう選択肢がどうしたって浮ばない。
 だからといって後輩に返事をしない理由にはならない。差別じゃあないよ、って呟いたら一瞬不思議な顔をした。そう、特別だから諦めろ。
 何かあったんですか、とそいつが言う。いいね、こういうときだけ、鋭い。たしかに何かはあったのだけれども。
「いいや、よくあるどうでもいいこと」
 机に放り出したスマートフォンが小さく鳴って震える。外出した部長かと期待したがどうやらメールだ。断ってすぐに確認すると、目に入ったのはさして長くもない文面。1回でいいのに数秒のあいだに3回は読み返した。題名は【今回の件】だと。

“どうでもいいと思ってる時点で、すでにだめです”

 このタイミングでこの文章。喧嘩してるのに考えていることは一緒で、喧嘩しているから一緒なのかもしれなくて、でも、一瞬喧嘩してることを忘れて、少し笑った。お前、こういうのずるいね。違うか。こんなことで、何かが励まされたような気分になる。多分俺が単純ってだけ。
「……よし」
 わざわざ気合を口にして席を立つ。スマートフォンをポケットにねじこみ、椅子に引っ掛けていたスーツを掴んでバッグを拾い上げる。部長もそろそろ用の終わるころだろう。連絡を取って外で待ち合わせたほうが手間も省けるってもんだ。
「お前、くら庵の定休日って知ってる」
 いえ、と後輩。その後にいってらっしゃいと続くのかと思ったら、じとりとした視線を俺の顔に貼りつけた。なんだよ、珍しいねそんな顔。塗り壁が人間になったらきっとそんなんだ。
 え? 甘味なんて食べてる場合じゃないですよ先輩、だって。ばか、違うよ。
「菓子折りのひとつでも持ってかないでどうすんだよ」
 ここの羊羹がお気に入りなんだご老公は。食い意地の張った後輩にみやげを買う気も失せたけれど、怒る気も変に落ち込む気もなくなった。笑ってやって、頭を軽く小突く。スーツに腕を通して、バッグを肩にかけて、なあんだと困り顔のままの後輩の肩をぽんとひとつ。忘れ物はない。
「じゃ、いってくるわ」
 ああ今日はまだ、お前に名前、呼んでもらってないね。


 * * *


 ささいなことで喧嘩をした、と思う。
 きっと、返信は来ない。意外と仕事をプライベートの境い目を守るあのひとは、ないようであるだろう昼休みにも取材先への移動時間にもそれが仕事のあいだなら急ぎの件でない限り、連絡は寄越さない。
 着信もメールも見てはいるよと言っていた。知ってます。だってときどきは返信くれるでしょう。帰りの遅いときにはちゃんと連絡を入れてくれるしそれで十分、不便も感じないし文句はない。送信中の画面がわりとすぐに切り替わる。満足して、俺はカウンターの上にスマートフォンを置いた。
 今朝は顔を見なかった。俺の寝ているあいだにあのひとは出勤していった。そういうことはたまにある。なるべく生活リズムを合わせるように心がけてはいるけれども、締め切りの都合や気分によっては俺は徹夜に近い真似もする。それは自宅が仕事場でもあることの利点だけれど、境い目が薄れやすいというのは欠点だ。
 無理はすんなよ。
 あのひとは、デスクライトをひとつ灯して机に向かう俺の背中に声をかける。先に寝るときは必ず。おやすみの代わりのように。昨日はそれがなかったのだけれども、多分、あのひとは振り返らなかった俺の背中をこっそり確認していった。気づいてない、なんて思ってるんスか。そうっとドア開けたって分かります。それは、労いでも心配でもおやすみでもない、何の代わりかなんてのも分かってる。だからほんとうは、怒ってるとか許す許さないなんて話は俺の中でとうに終わっていることなのだけれど、朝、顔を見なかった代わりに俺のこと思い出したらいい。メールは少しの嫌がらせ。そして、あのひとが俺の背中を見ていったことと、同じ。
 ごぽごぽと沸騰していた電子ケトルのスイッチが、ぱちん、と上がった。カウンターに置いたインスタントコーヒーの瓶が目に入ったけれど、やめておく。空のマグカップにそのままお湯を注いだ。寝不足で疲れ気味の、まだ何も胃に入っていない身体にコーヒーを流し込む気にはなれなかった。
 遅くまで取り組んだわりに進捗は思わしくない。捗らないのはだいたい予想していた。同じ時間にベッドに入ったら結局寝られそうにないかもって考えて、少し、意地になったところもあって、ああ、だからあのひとはきっと俺を見にきたんだろう。
 マグカップ片手に、日差しが入って明るいリビングを縦断する。冷たい。ルームシューズ、どこ置いてきたっけな。裸足が足音を残す。まだルームウェア姿の影がソファの向かいにある真っ暗なテレビ画面に横切った。南向きの大きな掃き出し窓にある白のレースのカーテンを透かして、柔らかな光の影が部屋に落ちていた。気に入りの広いバルコニーから見えるのは、眼下に広がる街並み。
 赤葦、お前の好きなところでいいよ。
 そう言われてここに決めた。お前のほうが家に居る時間長いんだからと、あのひとは一緒に住もうと言った後でそう言ってくれた。
 じゃあここで、と俺はバルコニーに立って言ったと思う。
 ……坂が長くない?ってちょっと億劫そうな顔をした。好きなところでいいって言ったくせに。
 夏は暑そうだなとも言った。それは俺も思いました。運動不足にはちょうどいいかな、って、それ、俺のことですか。
でも、手すりに腕を預けた横顔で、いい眺めだね、って笑った。ですよね。同じものが好きなことがうれしかったから、その日の夜もう一度見に行かなくてもきっとここに決めてた。
 冬の低い日差しが天頂近くにあるのを見上げながら俺は窓辺に立つ。まだ湯気の立つ白湯をふうふうと冷まして、そっと口をつけた。あたたかなほんのりとした甘みが喉を滑り落ちていく。じわり、と身体と腹の中に熱が満ちる。吐く息もふわりと穏やかだ。まだ少し眠気の残っていた身体がじょじょにほぐれて、今日のことに思考が手を伸ばし始める。
 部屋の中も思ったより冷えていない。きっと外は暖かいほうだ。洗濯して今日中に乾くかな。ごみ、は、きっと大丈夫だろう。俺がいつまで経っても間違えるからたいてい出してくれる。洗いものはない。昨日はお互い知らないところでカップラーメンを食べたから。掃除機は、いいや。あとでワイパーだけ使おう。ちまちまとすすっていた白湯の半分が胃袋に消えていた。
 出かけようか。逡巡する。仕事の進み具合は喧嘩云々の前に躓きがちで予定より遅れてる。家にある蔵書を無為に眺めて、パソコンと不毛な睨み合いを続けているのはあまり有意義だとは思えない、と、理由を探し当てる。気分転換、してこようか。頼んでいたものが入った連絡はないけれど、気に入りの古書店に行って、先日出た写真集を駅前の本屋で探して、時間があれば図書館にも寄ろう。ああ、スーパーも行かないとな。箱ティッシュがもうない。米は平気だっけ。 そうと決めたら着替えよう。その前に洗濯機を動かして、担当さんに電話を一本入れてから。
 書を捨てよ。街に出よう。そして本を求めよう。遅い朝食には外でありつけばいい。


 * * *


 誰だって謝るのは気が進まない。謝るのが大好きなやつはこの世にはいないはずだ。少なくとも俺は出会ったことがない。
「大変申し訳ございませんでした」
 先に頭を下げた部長の言に重ねて、俺も頭を下げる。大きな古めかしい日本家屋が奥に鎮座する、どっしりとした門構え。長い年月風雨にさらされ白茶けた柱の支える厚い木の門扉。立派な枝を伸ばす松の下で、鼠色の着物と羽織に身を包んだ主が唇を引き結び屹立している。
 地元の名士である主は自分にも周りにも厳しい人だ。口数は少なく、不要な相槌は打たない。こういう人の前では下手な取り繕いはいつでも出来ない。変な世辞や婉曲は意味がない。ただ、筋を通せば同じ気持ちであるいはそれ以上の気前の良さで応えてくれる。恰幅のよさのまま、器の大きい人だ。
 門から3段降りたコンクリートの地面。からからに乾いて粉を吹いたようにざらりと表面が摩滅している。目を伏せた。見えていない、ということは重要じゃない。滑稽でも、電話の相手に頭を下げるのはきっとふつうだ。
 非を認めるのを恥ずかしい。もしかしたら許してもらえないかもしれない、そう考えると不安になるのは当たり前で、でもほんとうは、認めないほうが恥ずかしくて、謝らなければ許してもらえる機会さえ失う。
 一言言って欲しかったね、と主は言った。そのとおりだと思う。時間が押していたはこちらの都合だ。朝イチで謝罪に来なかったのもこちらの怠慢。申し訳ございません。言い訳無用、謝るしかない。
 挨拶のように毎日使う言葉と違って、心から言う“すみません”や“ごめんなさい”のかたちはいざ使うとなるとなんだか上手く想像できない。練習しようと思う人はほとんどいないだろう。済んだことを人は少しずつ忘れてしまう生き物だからまた一からやり直しだ。
 謝りかた、というのはなかなか上手くならない。
 たっぷりの重い沈黙を破ってくれたのは主だ。頭を上げてくれ、とはっきりとした口調に俺と部長は恐る恐る様子を窺いつつ、身体を起こす。厳しい眼差しが射抜くように見定める。覚悟して息を飲む。隣に立つ部長にも同じ呼吸を感じる。
 ……え、新しい広告の相談、ですか。思いもよらない主の言葉に部長と顔を見合わせた。慌てて、頭を下げる。
「ありがとうございます!」
 良い仕事で必ず応えます、そう言って顔を上げれば、主のいかつい顔がほんの少し和らいでみえた。

 ほっとした心持の帰りがけ、俺はひとりでラーメンをすすっている。
 別れた部長は愛妻弁当が待ってると笑っていた。肩の荷が降りたような顔。きっと俺も同じような顔をしてるだろう。
 どんぶりを持ち上げ、スープを飲む。冷えた顔に立ち上る湯気が当たって視界がもわりとやさしくなる。舌先がほんの少しひりついた。腹のあたりがあたたかに満たされる。ふう、と息を吐けば心配事がひとつ湯気に消えたようにさえ、思う。
 あいつも今ごろ昼飯食ってるかな。きっと起きがけのメールだったんだろうから、朝食兼昼食ってとこかな。ちゃんと食べてればいいけど。もともと料理の得意じゃないあいつの一人ごはんはパンやお茶漬けといったところなんだろうけれど、仕事に没頭すると寝食惜しむとこがあるから。
 一緒に暮らす前、訪ねてみたら酷い様子で玄関に現れてどうしたんだって問いただしたことがあったっけ。
 仕事してて、といつもよりさらに重たいまなこが答えた。それは分かるよ。寝てないの、って見れば予想もついたけど、今日何日です?なんて少し無精ひげの生えてきた顔がふざけたことを言った。日付を教えると、じゃあ2日です、だって。メシは?まさか何も食ってないわけじゃあないよね。いやいやお前、水と菓子はメシに入んないから。
 こいつ、ひとりで大丈夫かなと思ったのはそれが最初だ。
 二人暮らしをはじめてからはそんなふうに仕事をすることはなくなった。昨日は随分と夜遅くまで起きてたようだけど、朝見たら横にきちんと寝ていた。そっぽ向いて背中を少し丸めて、布団の端を掴んで包まるようになって。ちょっと安心した。
 周りが見えなくなるほどの集中力も内に秘めた情熱もすごいと感心するし尊敬してる。けどときどき、すっかり日の落ちて真っ暗なリビングで、大きなダイニングテーブルにたくさんの本を広げて囲まれて、ぽつんとパソコンの明かりだけが眩しくて、でも、その明るさにも夜の更けたことにも気づいてない背中が少し、心配になる。
 ただいま、って言うとあいつはやっと顔を上げて、おかえりなさい、と笑う。ちらりと見るキッチンには料理をした形跡は、なし。お前ねえ。そこでもうあいつは分かって、クッキー食べましたよ、とか、これからその分食べます、と先回りをする。要領がいいんだ。だから、そーゆー不規則な食生活してるから太るんだよ、と最近はからかうことにしてる。
 ほどよく冷めて食べやすくなった麺を咀嚼しながら、ポケットからスマートフォンを取り出した。仕事のメールが2件。戻ったら写真部の奴探さないと。あいつからのメールは、なし。さっき届いたメールを親指が繰る。
 謝るのって、何でこんなに気が進まないんだろうね。
 恥ずかしいから? 許されないかもって思うから? 謝りかたが下手だから?
 恥ずかしいって思うこと、ほんとは悪いことじゃない。恥じることができるから人の気持ちはいつでも一通方向じゃなく可逆可能で、誰かと双方向になれたりする。
 約束がないことも事によってはいい。毎回すべてに何がしかの約束が用意されていたのなら、人はきっと心を尽くさない。気遣いを知らないと、相手だけじゃなく自分の心も苦しくなる。
 下手でも、きっとそのままでいい。変に上手になってきれいに卒なく謝るくらいなら、不格好でも手探りでもいいからまっさらな気持ちでぶつかったほうが潔い。飾らない気持ちはいつだって気持ちがいい。
 ……小さな“ごめん”なら、いくらだって言えるのにな。
 あ、きっとまた怒られるね。
 不服そうな顔で、ほんとに悪いと思ってるんスかって、あの顔、子どもっぽくて好きなんだけど、それ言ったら無言の圧力が怖いから言わない。
 あいつの短いメール。いつも的確で、真っ直ぐなあいつの言葉。
 そう、俺、“だめ”なんだよ。お前のことだと、なんか、だめになる。無意識のうちに甘えてるのかな、過信、してんのかな。言わなくてもいいかって思ってることや、言ってもいいかって思ったこと、量り間違えてるかな。
 謝らなくてもいいって思ってるわけじゃないんだけど、許されないんじゃないかとは俺、思ってないんだよ。だって、許さない、なんて一言もメールに書いてなかっただろ。都合いいか。でも、ほんとに怒ってたらメールさえくれないんじゃないかって。読み間違えてる?
 返信しようか、そう思って結局しなかった。“ごめん”が今は嘘っぽく思えて、スマートフォンごとポケットにしまった。
 麺をすっかり平らげて、スープもほとんど飲み干して。ぱん、と手を合わせてごちそうさん。腹ごしらえして満足した頭で、片付けるべき仕事の順序を考える。席を立つ。もう昼時も過ぎてぽつぽつと人の少ない店内。お会計、お願いします。
 外の空気が少し、冷たくなり始める。温まった身体には平気だけれど。
 今日は早く帰れっかな。そのときは、今から帰るよって電話をしよう。


 * * *


 翻訳とは、すくうことだ。意味だけでは足りない。作者の想いや意図はもちろん、生い立ちや祖国の歴史や暮らしの文化がどう形を変えて文章に言葉に息づいているか、行間に潜んでいるか、限りなくすべてを拾って組み直す仕事だと思う。
 日本は翻訳大国だ。世界中の多くの推理小説が読むことが出来る国はそうないと、外国人の友が言っていた。確かに推理小説に限らずその通りで、俺は自分の仕事に詰まるとよく本屋にも図書館にも行く。そこには先人たちの残してくれたたくさんの仕事がある。本のページをめくるのは、相談をする、ヒントをもらう、そんなのに似てる。
 景色が思い浮かばなかったら、写真集を見る。旅行のガイドブックもいい。歴史が分からなかったら歴史書だけじゃなくて、その時代を書いた作品を当たってみる。何気ない普段の生活が知りたかったらエッセイは面白い。絵本なんかも子どもにも分かる言葉で身近なことを書いていたり、挿絵に普通の家の様子が垣間見えたりする。
 ネットで調べることもあるしそのほうが早いこともある。けれど俺には、ペンを持って書くのと同じように本を持ってめくるという行為が、新しいことを覚えたり既にある記憶とつなげたり、自分の感覚に落とし込むのに合っているのだと、思う。
 あ。
 買ったばかりの本を開いて、さっそくぴんときたことをメモ帳に綴る。こうして書くと忘れない。違う、忘れる。考えごとをひとつ減らすために書いておく。空き場所を作るため。これで忘れても平気だ。
 わずかに聞こえるくらいのゆったりとした音楽の流れた空間で、俺は食後のコーヒーを飲みながら一息つく。
 やっぱり古書店にお目当てのものは届いてなかった。でも別の出会いが会った。ぶらぶらと眺めていた棚の上のほうに積まれた1冊。写真集は重かったのでネットで注文することにして、駅前の本屋では新刊の文庫本を2冊。
 外で昼飯を食べることはあまりない。1人で食べるなら手間のかからないものでいいと思うし、ランチどきのこういったおしゃれなカフェは女性で混み合って賑やかだから男1人はどうも居心地が悪い。外に出てた看板メニューになんとなく足を止めてみたけれど、人の波が引いていなかったらきっと通り過ぎていた。腕時計を見れば納得、ランチももう終わりかけの時間。Bランチに決めて、席は、出入り口の裏側の寒くて人の選ばなさそうなところ。ここなら静か。薄雲越しでも日差しを感じられれば、窓の近くは気持ちがいい。
 サラダとパスタのランチはなかなか美味しかった。
 けど、あのひとのパスタのほうが俺は好みだと、いささか失礼なことを考える。少し濃い味付けの和風醤油パスタ。ニンニクのいい香りがして、具はそのときどき家にあるもの。ベーコンやしめじ、小松菜、長ネギ、ナスなど変わったものはない。野菜多めの、気取った盛り付けもないその料理の味は、すでに俺の日々の味。
 あのひとは前から自炊派で、食べたいもん作ってるだけだよ、と言う。凝った料理は確かにない。
 でも、かんたんだからってパスタにチャーハンなんかをさっと作れて、今日はちゃんとごはん食べたいねって味噌汁に魚焼いて野菜炒め並べて、お前の家の味ってどんなのってカレーやハンバーグ作ってみせるんだから、十分じゃないスか。
 俺、やっとカレーやシチュー作れるようになったんですよ。切って煮込めばいいだけだから。
 だから今日はカレーです。
 ルウに鶏肉、とメモして、もうすっかりぬるくなったコーヒーを飲み干した。あんまりのんびりしていられる時間でもない。スーパーに寄って家に帰ろう。トートバッグを肩にかける。米と箱ティッシュのせいで大荷物になりそうだ。
 ちりんちりん、とドアベルの音が俺の背中を見送る。
 少し風が出てきた。吹かれるままに、家のある山のほうを見上げる。こう見ると随分な坂だ。歴史ある多くの寺が残るこの街は、三方を山に囲まれているからどこも坂が多い。家からは海も見えるけれど、近くはないから潮風の匂いは届かない。ただ、バルコニーで冷たい風を頬に感じると、海の方を眺めたくはなる。
 コートのポケットから取り出したスマートフォンはちらりとも光っていなかった。期待しているわけじゃないけれど、気にはなる。だってあのひとは前からいつも、そう、前からあのひとは。

「前から、たいしたこと、ないっすね」

 喧嘩をする前、俺はからかった。あのひとは、甘やかすようにくしゃりと笑った。
 後半に伸びるタイプなんだよ。
 そうスか。俺は笑った。あのひとは、ひとさじもむきにならずに、からかい以外のことを疑いもしないで笑い飛ばした。
自分で言うのもなんだけれど、俺は多分、言ってもいいことと悪いことの見極めがうまいほうだ。引き際がなんとなく分かる。お喋りじゃないからなかなかそれを発揮することはないけども。
 だからあのひとに言っても大丈夫なこととそうでないこともちゃんと心得てる。あのときも、やっぱり怒らなかった。今思い出しても怒っていなかった。だったらどうして思い出すんだ。分かってる。そんなのは、かんたんなこと。
 俺が、こんな軽口を叩いても怒られないって思ってること、あのひとはちゃんと知ってる。受け止めて、いいよと笑ってくれる。正直言うと、俺は負けず嫌いだから、きっとおんなじことを言われたらむっとするだろう。一応なるたけ表情に出さないようにすると思うけれど、きっとあのひとは気づいてしまう。何その顔、って。冗談めかして口元崩して、髪に、触られたら、まあいいかなって思うくらいには、俺も心広いんスよ。
 あのひとにとって、俺に負けるのはきっと惜しくないことなんだろう。
 いつも最初に謝ってくるのはたいていあのひとだ。ごめんと、あのひとは小さく笑う。俺になら、負けてもいいよって思ってくれてるから。たいしたことないとからかう俺を、それこそ、そんなのたいしたことないと許すように。

 ただいまを言うのが癖になった。
 それ、いいよね、と暮らし始めたころ、あのひとが肩をすくめて言った。それって、なんです。少し困ったような顔をした。
おかえりって言葉だよ。
 スーツ姿のあのひとは照れくさそうな背中を見せて寝室に消えた。ああ。やりとりを思い返したら、こっちまで少し恥ずかしくなった。同じところが帰る場所なんだと、ちゃんとわかったのはこのときだ。だから、おかえりの言葉が返ってこなくても、ただいまは言う。言うということを、忘れないために。
 両手にぶら下げていたずっしりと思いビニール袋をキッチンの近くに降ろす。やっぱり米を持ってあの坂を上るのはきつい。ビールを買い込んだのも間違い。持ち手の跡のついた赤くなった手のひらを擦り合わせながら、冷蔵庫に入れるものを放り込み、冬の風に少し湿っぽくなった洗濯物を取り込んだ。寝室に、コートとマフラーを置いて。
 壁一面の本棚。俺もあのひとも本は持っているから結構な量だ。リビングにも本棚があるし、入りきらないものはストレージボックスにしまわれている。買ってきたばかりの本を手前に積み重ねる。まだ手をつけていないものは、ここ。
 ふと、眩しそうな顔と目が合って、俺はベッドの端に腰掛けた。
 棚の一角に立てかけた小さなコルクボード。いくつかのスナップ写真。中には、懐かしい、と思う古い写真が1枚。
二人とも写真を飾る趣味はなかった。本のようには、写真を大事にはしてこなかった。出かけてもそもそもあまり撮らない。あまり見返しもしないし、HDDに保存したままでアルバムを作ろうとも思わない。
 これも一緒に暮らし始めたころだったと思う。ふたりで撮った写真を一枚、あのひとが実家から見つけて持ってきた。互いに身長はそのころから1センチも変わっていないのだけれど、雰囲気がやっぱり若いと少しのこそばゆさに笑いあった。そのまますぐに仕舞いこんでしまうのが忍びなくて、フォトフレームなんて持っていなかったからテープでその辺の壁に貼っておいたのがきっかけ。
 そのままだと壁紙が痛むんじゃないの、とあのひと。じゃあ、と昔メモを貼り付けていた小さなコルクボードが久しぶりに役に立った。
 人並み程度に遠出もする。けれど、ふたり並んで写真を撮るのは少し気が引ける。だから写真の中に映るのはほとんどひとり。
 もっと笑えばいいのに。
 写真の出来を見て、あのひとはくつくつと笑う。元からこんな顔なんで。一応俺もそう答えて、結局いつも同じような顔で写ってる。だって、あのひとが笑うからだ。お前らしくていいよと、無理なんかいいよと、形ない言葉をその笑みに俺は受け取るから。
 裏側には、いつでもあのひとのかたちをしたやさしさがある。俺を撮るファインダーの後ろに、いつもあのひとがいるように。
 でも、とりあえず“ごめん”って言っておけばいいと思ってる節があるのはどうかとは思ってる。

「出た、その場しのぎ」

 そうやって指摘するとまた、赤葦ごめんて、って言うんだけど。分かってます。どんな形であれ、結局俺に負けてくれてるんでしょ。たまに文句をつけるけど、そこ、嫌いじゃないです。
 ……あのことを気にする人なんかじゃないと思うけど。本気で俺が思ってるなんて、誤解してないとは思うけど。あのときちゃんと言えばよかった。
 そんなこと、ほんとは思ってない。たいしたことないなんて、思ってなんかいない。
 あんたにすげー好かれてるんだって俺、疑いなく思ってますよ。
 コルクボードに貼られたいくつもの思い出。自分だって一歩間違ったら悪人面みたいな顔で笑うくせに。
 ぴん、と爪弾く。部屋に落ちる乾いたコルクの音。

 俺は、このひとのすべてを、すくえているだろうか。


 * * *


 坂を、ゆっくりと歩く。のんびりと。足跡をつけるように一歩ずつ、踏み込んで、上る。
 今日はあれから何も大きな一報は入ってこなかった。急ぎの仕事もない。溜まっていたこともちゃんと片がついた。昨日からお疲れ、そう部長が労ってくれたから遠慮なくカバンを拾った。明日は、休みだ。
 前屈みになっていた姿勢を直したら、視線も持ち上がった。ずーっと先には向こう側の見えない坂のてっぺん。道幅の広く長い坂に割り開かれた住宅街。このあたりの街並みは比較的新しいほうで、背の低いマンションもちらほらと立ち並ぶ。
 左手に見えるくすんだ水色をした横長のマンションが俺たちの家だ。遠目から見ると、水色なんだか灰っぽいんだかあんまりよく分からない。よく晴れた日なんて白っぽく色が飛ぶ。まあ、外壁の色なんて俺はなんだっていい。
 あいつのほうが家に居る時間が長いから、景色の良いところがいいんじゃないかって思ってた。たぶんここって言うだろうな。バルコニーに出たとき、そう直感した。やっぱり。ここがいいです、って目を細めて楽しそうに言ったから、じゃあいいやって。俺もたいがいお前に甘い。坂がなあ、とは、今でも思うけど。
 あ、電話。しようって思ってたのにすっかり忘れてた。もう家まで100メートルもないけれど、俺はスマートフォンを耳に押し当てる。沈黙のあとのコール音。1回、2回、3回鳴って。仕事中? 珍しく、飯作ってるかな。まあ後5分もしないで着くからいいけど。
 耳から外しかけたら、あいつの声。

『黒尾さん?』

 ……ああ、今日はじめてだね。すっかり心構えを忘れた俺にそれは不意打ちで、言おうと思ってた言葉がすぐに出てこなかった。取り落としそうになったスマートフォンを慌てて持ち直す。
「えっと、みやげ、買ったから」
 手にした白い箱。最寄り駅のすぐ近くにある、お前の好きなケーキ屋の。
 付き合い始めたころ、甘いものが好きだと知っても何を買っていいのか分からなくて適当に買ってきては笑われた。買いすぎです、ってくすくすとおかしそうに。ふたり分でいいのに。それはそうだと頭をかいた。黒尾さん甘いのそんな好きじゃないでしょ、って、うん、そうなんだけど。
 喜ぶんだもんお前。そういう顔見るの、実は好きなんだって言ったら笑うかな。で、結局残りもお前の胃袋に消えるだろ。黒尾さんのせいで最近太った、ってあのとき怒られたね。

『何、買ったんすか』
「シュークリーム」
 期間限定のカラメルがかかって甘そうなやつ。お前こういうの好きでしょ。
『……あとは』
 さすが。分かってるね。
「レアチーズケーキ」
 俺のはプリンなんだけど一口やるから。

 止まった足をそろえて、視線を伸ばす。うちはすぐに分かる。4階建ての3階。いちばん左奥の角部屋。
 今どこかって? もう、すぐ近くだよ。
 広いバルコニーの奥にある、大きな窓。そこにはオレンジ色の灯りがレースのカーテン越しに見えた。なんだかほっとする。
 ……俺が、お前にしてやれることって実際はけっこう少ない。
 こうやって好きなものを買って帰ったり、休日に出かけたり、たまに外で待ち合わせて美味しいものを食べたり、おおまかに言ったら、傍にいようとすることしか出来ない。
 これを総じて、好きだということなのだとしたら、好き、の気持ちで出来ることは案外かんたんで普通なことしか出来ないんじゃないかと思ったりする。
 見つめていたリビングの窓の半分がにじむ眩さで鏡のように反射しているのに、瞬いた目が気づく。首を巡らせ、俺は振り返った。
 いつのまにか、冬のひそやかな風に流されて張っていた薄雲は彼方にたなびいている。もうこちら側は夜を迎える準備の出来た藍の淵で、うっすらと西日が散らばる空の原、そして遠い海の向こうに沈みゆく熟れた夕日が境い目を少しずつ曖昧に溶かして、空と雲を染めていた。
 坂の上から見える、山の裾野に広がる大きなビルのないちっちゃな街並み。
 右手には。鈍い青をたたえた冬の海。建物に遮られて少ししか見えないのだけれど、その静けさが今だけ夕日にきらきらとさんざめく。
 地平線に消えようとする太陽に街並みの頭だけが照らされて、灯火のともる地上には静かな影が落ちて。一日の終わりを丁寧に、誰にも等しく教えてる。
 夕焼け、見てる? と呟いた。
 だいたいいつも見てますよ、と少し呆れた様子。
 そっか。俺は見たの、久しぶりだよ。
「赤葦」
 眩しそうな顔をするとさ、ちょっと胸の端がきゅっとなるのって、なんでだろね。
『なんです』
 なあ、この景色、あと何回見れるかな。
「……お前、長生きしろよ」
 願いはなんてたよりない。
『急に、どうしたんスか』
 ね、やっぱりしてやれることって小さいね。
「でさ、俺がお前よりほんのちょっとだけ長生きするから」
と俺。突然何の話ですか、と硬くて訝しげな声。
 ちょっとだけだから、と俺は言った。

「さいごに、お前の手を握るぶんだけ、俺が遅れていくから」

 なんて、ね。眩しくて、もう見てられなかった。
 あ、やっぱ怒ってる? 黙りこんだ向こう側に俺は呼びかける。あれ。切られちゃったかな。
 もう着くから切るよ。笑って振り向くと、マンションのエントランスから忙しない足音をさせて人影が飛び出してきた。電話を耳に当てたそのひとは勢いよくこっちを向いて、あ。
 赤葦。
 すぐに俺に気づいて、赤葦は笑わなかった。唇を真一文字に結びそうそう穏やかでない顔をして、大股ですたすた、サンダルの足音をぱたぱたと鳴らして俺に向かってくる。
 まさか出迎えてくれるとは思わない。手にしてたスマートフォンと、どう見ても機嫌が良いとはいえない顔を見比べて、挨拶のつもりで手を上げた。そのごまかしはきいたふうがない。だよね。眉を1ミリも動かさないで俺をとらえた赤葦は、目の前までやってくると俺の左肩あたりへ視線を逸らして、それから1回、どん、と拳骨でそこを殴った。
「いた」
 マジでちょっと痛かった。
 ごめん、って謝るタイミングはない。なぜならすぐに赤葦が抱きついてきたから。飛びつかれたようになって受け止めて、一歩よろめいた。……愛に? それでもいい。愛って重いね。
 右腕を肩に回して、左腕は腋の下に差し込んで、包み込むようにぎゅうっと赤葦は俺の身体をつかまえた。変なこと言わないでくださいよ、とくぐもった声が眩しいものを見たときの色で俺をなじる。
 ……うん。ごめんは今じゃない。ありがとうもちょっと違うかな。好きだよは、顔を見て言いたい。ほんとは、全部伝えられたらいいのに。

「ただいま」

 触れるところから伝わる体温。ぎゅっと手を回して抱き返したら、それがもっと近くになる。
 おかえりなさい。
 ひたりとくっついた頬の傍に聞こえた。うん、分かってる。少しは自惚れてもいいかな。ごめんなんてもういらないよ。きっと俺はもういろんなものをもらってる。
 やわらかなくせっ毛が首筋が少しくすぐったくて。スーツを掴むその手のかたち。ちょっと力強くて痛いくらい。ぜんぜん柔らかくなんてないのに、いちばんほっとするお前の背中は抱きしめがいがあるってもんだ。
 肩口に落ちる小さな呼吸。胸に重なる心臓の音。


 なかったことにしてとは、言えないから。
 だから全部、覚えていようと思うんだ。



fin.(2015.1.21)
深○絵里、リ○ーフランキー出演のダ○ワハウスCM「ここで、一緒に」篇のパロディでした。(こちらの公式HPでCM動画が見れます。www.daiwahouse.co.jp/ad/cm/kokode.html)
もともとこのCM好きだったのですが、年始に久しぶりに見て「……これクロ赤にぴったりじゃないか?」って思って、文章化してみたいなあなんて言ってたら、ぜひ!と言ってもらって調子に乗りました!(笑)
90秒のCMがどうしてこんなふうになったのか、ちょっと本人にも分かりませんが、書くの、とてもたのしかった。
書くために何回もCM見直したんですが、会話と会話のあいだ、行間にいろんな感情が落ちていて、説明不足なんじゃないって思う話題の飛びかたも、そんなことない、流れできちんと分かるようになっていて、映像もそれを丁寧に補っている。作りこまれてるなーと惚れ惚れしました。
少しずつ、どこかが何かに、誰かにつながっている。そういう雰囲気が出せていたらうれしいです。
CMの中にも、公式サイトにも、夫婦の細かな設定が明記されていなかったので、CMで拾いきれる情報を頼りにしつつ、わたしの好みと独断で、深○絵里(妻)=赤葦(翻訳家)、リ○ーフランキー(夫)=黒尾(新聞者勤め)としました。
翻訳家も新聞記者も、知り合いにいないしあまり下調べしなかったので、イメージでお送りしています。(汗) すみません。
新聞記者だけ、映画『ク○イマーズハイ』のイメージとエピソードを参考にしています。この映画、とても好きです。いろんな人間が画面狭しと自分を生きていて、ひとつひとつ聞こえない会話に雑音なんてひとつもないなあと感じる、人間臭さがとても好き。
勢いのままに書いたので、あまり詳しく決めてないのですが、原作どおり高校生のあいだはバレーしていて(大学生で続けててもいいかな)、高校大学のあいだ二人とも知り合いで、付き合い始めたのは仕事で久々に顔を合わせた社会人になってから、かな?と思っています。
CMがあと2本あるので。(笑)
続きもかけたらいいなと思いつつ。
This fanfiction is written by chiaki.