お前はいつだってなんだって、俺より少しの勇気があった。
さらけ出すことを恐れず、忘れることを恥じて、選び続けることを信じて、振り向かずにいることが力になると知って、ときどき、俺が追いつくのを歩みを止めて。
数十年に一度の流星群の夜。星屑が幾千もの線を描く星降る空だったなら、きっと言葉はいらなかった。臆病な俺の、あれは言葉にできない夜だった。
あんたが欲しい、屈託なく笑うお前にどんな答えをやれるだろう。果てなく、永久に。
普遍でありたい。おおげさなものなどいらない。かけがえのない普通でいい。俺はどこまでも俺でしかない。お前が触れたいと望んでくれる、ただひとりでいい。
並んでつないだ手の、小指だけが触れ合った。約束ができたらよかった。わがままだと、ひどく自分を傷つけなくていいように。わがままだと、少し自分を嘲るお前をそれでも好きだと、証明できるように。
何も言わなかったから、空を見ているのだと思っていた。夜明けの遠い漆黒の淵。お前の曇りないまなこにだけはさんざめく流れ星が映っている。誰の目にも、届かずとも。
ふやけた静かな横顔に手を伸ばすのは躊躇われて、でも呼び止めたくて、俺はそのことばかりを考えて、曇り空の向こうで流れる星々の運命なんてもうどうでもよかった。
一生の仕事だ、という。今お前の頬に流れるもの。もし俺が与えてやれるのなら、お前はそれを赦してくれるだろうか。
fin.(2015.2.23)