きみが世界を壊したいなら
「ごめん、ちょっと協力してもらえないかな。映画部なんだけど」
「……は?」
 校舎と体育館をつなぐ渡り廊下の屋根のした、赤葦京治は瞬時には理解出来なかった誘いに振り返る。まるい、漆黒のレンズがこちらに差し向けられていた。それは赤葦の知るビデオカメラとは少しかたちが違っていて、本体の下部に持ち手がついている。
 うん、と何かに満足したような声がそのカメラを下ろし、映画部なんだ、ともう一度首傾げるように言って笑った。メガネをかけた優等生といった風貌の青年の、その笑いかたは誰かに似ているような気がしたが思い出せずに赤葦は小さく眉を寄せる。
「いや、なんていうか、わかると思うんスけど」
 これ、と身に包んだ自分の制服をつまみ、それから相手とを見比べるようにする。梟谷学園のグレーのブレザーに黒のスラックスという自分とは違う、紺のブレザー、グレーのスラックス姿。どう見ても音駒高校の生徒だ。
「俺、他校の奴ですよ」
 赤葦が今いるのはバレーボール部の合宿ためにやってきた音駒高校だ。合宿の最終日、打ち上げのバーベキューも終えて、宮城からはるばるやってきた烏野高校の面々を見送り、これから雑多な片付けなどもろもろこなせば長かった合宿も無事終了、というところだった。解散時刻まで時間的には余裕がある。片付けもだいたい1年生が済ませてくれているだろうし、集合時間もまだだ。でも、そういう問題でもなく、他校の生徒が部活に関わるのはどうなんだろう、という小さな疑問を追い越して、映画ってなんだ、という疑わしさが第一に立つ。
「よくわからないんで、すいません」
 軽く頭を下げてその場を後にしようとすると、頼むよ、と少々強い口調の声が引き止める。遠慮なく面倒臭げに視線を投げかけると、大丈夫だから、と口元が柔らかくなった。
「エキストラだから演技とかほとんどしなくていいし、映るのもちっちゃくだから」
 そうして赤葦のことをメガネの奥の瞳で上から下まで滑るように眺めると、他校の人がまじってくれるとリアリティが増すんだ、とその態度が懇願のまじるものになる。
 面倒なものに捕まったな、と正直思う。断る理由を先回りされてしまった上に、たぶんこの人は自分より先輩だ。十センチほど背の小さい青年は、あの人と違って上履きのかかとを踏まずに履いていた。あの人と同じ、赤のつま先。学年で色が分かれてるんだと、尋ねもしていないのに、沈黙に困ってもいないのに、気を遣うわけではなく、半分声の肌触りを味わうために耳を傾けていた赤葦に話したのは、そういえばこの渡り廊下だった。
 眩しいものを見たように小さくくしゃっと笑う横顔が、今目の前にいる青年と重なる。何のことはない、似てるわけなんかなく、沈みゆく陽のほんのり焼けた眩しさにに顔を歪めただけだった。
 夕日と一緒に撮りたいんだ、と差し込む西日を受け止めながら青年が言う。ああ、猶予がないのはそっちなのか、と赤葦も、ちら、と空の彼方へ落ちていくだけの焦がれた太陽を認めて瞬いた。
「……すぐ終わるならいいっすよ」
 諦めまじりの了承を聞き終わらないうちに青年が礼を言った。十五分程度で終わるから、と分かりやすく早口になった声音に赤葦は頭をかき、重たげなまぶたで頷き返した。


 連れて行かれた場所は校舎の屋上だ。ここで待ってて、と手すり壁の近くを指示されて待ちぼうけになる。反対側の手すり壁までの距離を眺めて、細長く幅の狭いつくりに違和感を覚えたが、考えれば何のことはなくすぐ下のフロアだけが少し狭いのだと気づく。
 屋上にはすでに映画部と思われる面々と、かき集められたエキストラたち合わせて二十人程度が揃っていた。そのうちの半分くらいは自分と同じように立ち位置を割り振られ、手持ち無沙汰に直立していた。その中に、森然と生川の制服姿を二つ三つ見つけて、不意に目の合った名前も知らず挨拶はしたこともあるかもしれない他校のバレー部員に、赤葦は軽く会釈をした。
 沈みゆく夕日から伸ばされる斜光は右手、声をかけてきた青年はカメラマン兼監督でもあるらしく、赤葦の正面より少し左に寄ったところから仲間とカメラを覗き込み画の納まり確認している。エキストラのほとんどは奥行き半ばに多く配置されていて、いちばん深いところ、画面でいう後方の端に配置された赤葦はカメラの角度や人の散らばりを窺って、どうやらほんとうに見切れるくらいにしか映らないことにほっとする。目立つ場所に配されているのはちゃんとシナリオを理解している映画部や音駒高校の人間なのだろう。
 まだ始まりそうのない気配に、秋の空の縁に滲む太陽の眩さを避けてのろりと手すり壁に向き直る。風はほとんどない。ひそやかな、たゆたう空気の流れだけがそこにある。このあたりの街並みはそう大きな建物もなく、坂も少ないようで平たかった。学校の周囲を囲む背の高い並木に、遠くに見える鉄塔といくつも渡る電線、すぐそこにはさっき自分が向かっていた体育館の半円型の青い屋根がてっぺんをつるりと光らせている。腕を預けた手すりの下、校舎の反対側はもう日の当たらない影のなかにとっぷりと沈んでいた。外に投げ出してみた手が、地上のコンクリートを背景にやけに白く浮き上がる。手首の上で秒針を鳴らす腕時計を確認して、まだかな、そんなことを考えた横顔に嫌味のない声がぶつかって落ちる。
「悪いね」
 もう始まるから、と付け加えられたのに首を巡らせるとそこには映画部の青年が立っていた。いえ、と小さく首を振り、手を下ろして半身を向ける。
「ところでどんな映画なんですか」
「うん。それを説明しにきた」
 ゾンビ映画なんだ、と彼は言った。
「かんたんに言えばね」
 その一言には、そうだけどそれだけじゃないんだ、という少しの自負が込められているように感じたがこれきりのエキストラに長々と説明するのは野暮と踏んだのかもしれない。まあ、そんな時間もなかった。見ればいつのまにかまた人が増えていて、制服や髪型を乱し、顔や捲くられた腕や足にいわゆる血のりをつけたゾンビ役の人間が、待たされていたエキストラたちの元へ宛がわれていく。恐怖に震える人間に強張った腕を引っ掛けるゾンビ、腰を抜かして座り込む人間にいままさに襲い掛かろうとしているゾンビ、腐りかけた脚を引きずって逃げる人間をのろのろと追うゾンビ。
「なんか、ほんとに映画みたいっすね」
 思わず口にすると、青年は、やっぱりあの人に似かよりもしない微笑みかたで、ありがとう、と言った。
「さっきも言ったとおり、ここは小さくしか映らないからほとんど演技なんていらないんだけど、足掴まれて、ちょっと抵抗するふりして、あとはおとなしく喰われるだけでいいから」
「はあ。……誰にですか」
 答えはゾンビでしかないのを分かりきってした問いは、そこ、と地面を指を指されて肯定される。見ると、床に這いつくばり血まみれの手をこちらへ伸ばすゾンビがいた。
「うっ、わ」
「ははは。それと、カメラ見ないようにだけ注意して」
 半歩分とっさにに身を引いた赤葦を置いて、じゃあよろしく、と軽やかに駆けていった青年と、いつのまにか自分の少し離れたところで志半ばで息絶えたかのようにうつ伏せに倒れる音駒の生徒を交互に見やって、赤葦はため息をつく。
 そろそろ始めまーす、と映画部の人間らしい女生徒が大きな声で呼びかけた。配役の位置を確認しながら遠くの正面を横断する青年と目が合って、手のひらを上下させる仕草に座れという指示を見て取る。ああ、と何となしに頷きながら尻餅をつくようにその場へ座った。ゾンビが足を掴みやすいようにそちらへ足を放り出すようにしてから青年を仰ぐと、彼は手で大きな丸を作って返事を寄越した。
 自分の足元で、手の甲を血のりで汚しコンクリートの床を掴むようにしているその生徒はどうやら始まりの合図まで微動だにする気配がない。顔は、片方の頬を床につけるように伏せられていて、わしゃわしゃと手でかき混ぜられたぼさぼさの黒髪の後頭部しか見えなかった。少し皺の寄ったスラックスに、裾からのぞく紺色の靴下のかかと。自分とたいして身長の変わらなさそうなゾンビだ。ひとたまりもなさそうだな、とぼんやり考えているあいだに、周りの声が、ふ、とやんだ。

「……よーい、スタート!」

 焼け落ちていく夕日色の世界に、人間だった異形の者たちのうめき声のような濁った唸りが響き渡る。
 身構えていたはずなのに、がっしりと、思った以上に遠慮のない力で足首を掴まれ赤葦は少し身じろいだ。抵抗、と言われても本気で蹴る殴るはまずい。なにしろ相手は生身の人間だ。右足にも手を伸ばされ、自分の身体を這い登ろうとしてくるゾンビに困惑しながら、間違っても蹴り上げないように注意し足を少々ばたつかせて、ほんの少し後ずさるようにする。演技というより知らない人間に好き放題触られるのはごめんだな、という本能がどちらかと働いた。
 赤いつま先が地面をひっかき、引きずり込むような力で太腿をつかまれ、もう片方の手で腰を引き寄せられる。どこのスポーツ部だろう。そんな逡巡をしているうちに逆光を浴びた大きな人影が自分へ覆いかぶさろうとするのに促されて背中を床についた。どうしようか、迷って首を持ち上げたまま、目の慣れない黒の輪郭とその背後から滲んで目を射す夕暮れの眩さの明暗の差に顔をしかめる。
 ああ、喰われる。
 ひとつ息をはいてゆっくりと瞬きし、肩の力を抜いておとなしく横たわろうとしたときだった。右手が覚えのある力加減で赤葦の肩をつかまえると同時に、左手がさっと赤葦の後頭部のしたに入った。クッション代わりに納まった手のひらは、赤葦の知る大きさで、きっと誰からも見えないけれど腕に抱きとめられるような格好になる。
 すっかりと、影があの眩さを隠してしまった。縁取るきらめきに顔かたちの造作がやっと薄暗く浮かび上がって、赤葦は見上げたその顔に目を見張った。薄く細い眉に、長くないまつ毛の据わった目つき。
「く、ろおさ」
 ん。
 最後の一文字はにやりと歪めた唇にあっという間にふさがれて吐息に埋もれた。カメラのある方向から隠れるように首を傾け赤葦の唇の端っこに、ちゅ、と口付ける。
 大きな声出すなよ。
 吐息の熱の冷めない至近距離で口早にささやいて、ゾンビもとい黒尾は、髪に差し込んだ左手をもぞもぞと動かし撫ぜながら再び赤葦に唇を合わせた。下唇をついばむようにして薄く開かせたそこにぬるりと舌が入り込む。まともな形にならない抵抗を息でこぼすと、絡み合った舌を伝わって、あの低く通る声が震えるように喉で笑った。
 ……こっのやろう。
 叩くのもあれだ。それこそ目立つような動きはできないし声を出せば台無しになる。カメラの死角にあたる右手で黒尾の腰のあたりを掴んで五本の指で力をこめてつまむようにすると、う、とくすぐったそうに乱れた吐息が赤葦の舌の根から先を吸って濡れた音がこぼれた。いたずらな復讐に満足して、赤葦はぱたりと手を下ろすと、後はもうゾンビに好きにさせることに決めた。
 唇を、食われる。口のなかを貪られて、舌のぬるさを絡めとられる。熱い、あつい、やわらかな、自分のものと同じ欲のかたちをした粘膜が、くちゅ、ととろけた唾液をさらって飲み下して、息をついで、塞ぐ。次はそっち、とされるがままに、こくり、と舌を伝い落ちる熱を胸をすくませて飲み込んだ。黒尾の右手がブレザーの上から首筋と鎖骨を撫で上げる。境い目を探り合う気持ちよさにふと酔いかけた感覚が、ふいにざらついた舌の感触をすくって背筋がくすぐったいような痺れを、じんと走らせた。
 や、ばい。
 息を飲んだのに気づいたのか、黒尾が、ん、とわりと呑気な声をもらしながら赤葦の唇を包むように食み、自分の唇を舐めとりながら鼻先のぶつかるわずかな距離をとった。含みのある小さな黒目に眉を寄せ焦点を合わせて、赤葦は小さく睨む。
「なに、感じそうになった」
 吐息まじりの声が笑っている。視線が外れて今度は赤葦の左頬のした、顎の骨に黒尾は口づける。唇でつまみ、離す。鼻先でこすられ促されて、黙ったまま赤葦は右にゆっくりと首を傾けた。どうやら寝転がってしまうと向こうの手すり壁に遮られて夕日の眩しさを気にしなくてもいいらしい。薄い膜を張ったような水色の空に、放射状のひかりが粒子を散らばすようにさざめいていた。
 黒尾が、赤葦の肌の感触を味わうように舐めては口付けを落とした。あたたかに濡れた跡が一瞬空気に触れて、取るに足らない肌寒さを覚える前に次のキスがかき消していく。ネクタイをきちんとしめた首元をさらけだしたままで、赤葦は伏せがちに目線を左に流す。
「……してんの、バレないですか」
「そっから、カメラ、見える」
「いえ」
 見えるのは自分を喰らう黒尾の頭と遮るもののない屋上の空。自分の首筋に顔を埋めるその髪から、いつもと違うことだけはわかるシャンプーのほのかな香りと、いつからかこれが男臭さなのかとなんとなく分かるようになった黒尾の匂いがかすかに漂った。
「なんでゾンビ……」
 ため息と、首筋をやさしくなぶるくすぐったさにトーンをおさえた声がわずかに振れる。
「それはこっちの台詞」
 俺は前から約束してたんだよ、とくぐもったような黒尾の声が言った。監督兼カメラマン兼、部長でもある青年は一緒のクラスらしい。俺はさっき声かけられました、そう告げると、
「こういうの、引き受けるタイプだと思わなかった」
と言って、ちう、とわざとらしく唇で吸い付いたのを赤葦は見えないところで結局げんこつで軽く殴った。
 黒尾は先ほどから首の筋の張ったあたりを甘く噛むように遊んでいた。歯を立てずにやわやわと濡れた唇で食べるようにする。もし黒尾の口に血のりがべったりとついていたなら、ゾンビが人間の首筋に噛み付いているリアリティがきっとあっただろう。
「よく、わかんないです」
 ぽつり、赤葦は返事をした。あんな頼まれごと、確かに断ってもよかった。けれど制服は同じで、背丈と笑いかたと上履きの履きかたはひとつも似通っているとこはなくて、ああ、つま先の赤も同じだった。それだけだった。
 ふうん、と黒尾の吐息が肌をくすぐる。
「ん……」
「赤葦」
「ん」
「寝るなよ」
 寝てません、と返したものの自然と降りてきていたまぶたはまどろみの心地よさに少し重たくなっていた。風に吹きさらされることのなかった屋上のコンクリートはわずかにまだ昼の陽気を内包している気配があって、背中が気持ちあたたかい気がした。自分の頭をかばってくれた手はまだその下にある。すぐそばには、触れられている、そのささやかなしあわせをくれる肌と熱が寄り添う。
 ぴたり、と頬を押し付けられて、耳に息吹きかけるのやめてくださいよと咎める前に気だるげな声がもれた。
「飽きてきた」
 この体勢地味にツライ、と語尾を伸ばす黒尾に嘘でも恋人に飽きたとか言うなとそれこそ遠慮なく叩いてやろうかと思ったけれど、やめた。このまま寝てしまってもいいなと思いかけた自分にも気持ちはよくわかる。
「このシーンどうしたら終わるんです」
「え、なんか皆食われて終わりとかどうとか」
 あれ、それは最後の話だっけか? ひとりごちる黒尾がまた、ちゅ、と左頬で水音を跳ねさせる。
「終わったら、終わりですね」
 腕時計は確認できない。実際はそれほど時間も経っていないだろう。ああ、と頷いて黒尾の低い声が耳に当たる。だから、いつもやめろと、言っているのに。
「“それでもここで生きていくんだ”」
「は?」
「いや思い出したの、台詞」
 このシーンのラストだよ、と言われて、なんだ、と赤葦は思わずぱちと開けた目をしばたく。ほんのちょっとのあいだ目を閉じていただけなのに、空はまぶたの裏の影がうつったかのように青ざめて見えた。真上にある風のない空が少しずつ夜を迎えようとしている。
「あ」
「感じた?」
「そうじゃなくて」
 そのネタもういいです、と唇を尖らせた赤葦の首筋に生暖かな吐息がかかる。生きている。ゾンビなんかじゃなく、黒尾が触れて、ここにいる。
「黒尾さん、見て」
 その言葉につられて黒尾が一瞬身動きしたが、いや、まだだめだって、と膝ついていた脚をもぞりと控えめに動かすにとどめた。今さらながら、男が男に跨り圧し掛かられているのはずいぶんな状態だなと赤葦は思ったけれど、高校の部活動ということを考えると、男が女をあるいは女が男を引き倒すより問題ないのかもしれない。見えないだけなのにな、くだらないことで思考の端っこを引っかきながら、死んだふりをしていてこっちからキスできないのを少しだけ悔しく思った。

「カーット!」

 大きな声が現実を以ってをこっち側を引き戻す。遠くにぽつぽつと聞こえていた演技のやりとりがそういえば少し前からやんでいた。漂っていた少しの緊張のようなものがほどけて、どこからともなくお疲れの言葉とともに和やかな喧騒がよみがえる。
 食われる人間はそのまま人間に、ゾンビは生きた人間にけろりと戻る。
 ずっと同じ体勢を保って身体が窮屈だったのか、変なうめき声をこぼしながらのろのろと黒尾が顔を上げた。そのほうがよっぽどゾンビみたいで、赤葦は少し笑った。
「で、何を見てって」
 自分の顔の横に手をつき見下ろす黒尾の影。まだ沈みきっていない太陽の残光が黒尾の髪の端でちらちらと遊ぶ。薄暗さに慣れた自分の目が、今度はちゃんと影のなかの黒尾の表情を捉えた。急かさないで、瞬きも少なく待つ黒尾のやさしさはいつも変わらない。
「……いちばん星」
 もう、隠れてしまった。黒尾の影の向こう、まだ明るい夕暮れの空に白っぽい小さな星がひとつ光っているはずだ。それをわかった上で、赤葦は黒尾の胸を指差した。願いをかけるのは流れ星だけれども、かける希いはそこにある。
 何かがうつったかのように、ああ、と黒尾が呟いた。そうして浅黒い影のなか、赤葦の好きな顔で目を細めて夕焼けみたいに笑って、なんにも、振り返らなかった。


fin.(2015.12.7)
わりと物騒なタイトルなのですが、赤葦の誕生日お祝いテキストでした。
なにしろ当日に書き出したうえ、当初の心積もりがこのあいだ(黒尾誕生日)みたいなポエムでも書ければからの、2000字くらいかなからの3000字いきそうからの、……もう文字数気にするのやめる、だったのでなんかもうよくわかりませんが、とにかく書き終わってよかったです。1週間とか過ぎなくてよかった……
パロとまではいかないんだけれども、ある映画を見てふと思い浮かんだネタで、話していた当初はもっとラブコメみたいなきゃっきゃっした話だったのですが、同じ学校だったら面白く話が進められるんだけどなあ〜と思いつつ、たまにはパロもパラレルも封印してふつうの高校生クロ赤書いてみようと思ったら、思った以上にふんわりした話になった気がします。
帰りたくないな、そんなことを言えなくて分かりきって遠回りにもならなくて、ただ言いたかった、それだけのような。
振り返らないということは、黒尾も赤葦の気持ちを十分わかっていて、ときどき、このふたりは互いのことしか見えなくなってるときがあるなあって思います。でも、危うげでない。なのに、ねえ、お前が世界を壊したいなら、それもいいかと、思ってしまうようなまっすぐさがある。
ほんとうには、しないんだけど。自分たちだけで世界は完結しないことを当たり前のように分かっているから。
……ふたりでいるとちゃんと強そうだなあ、黒尾さんと赤葦は。
なんでこのタイトルなのか、自分でも、感覚で納得いっても頭じゃ納得いかなくて書いてるあいだずーっと考えていたんですが、書き終わったらしっくりしました。
振り返ってもいいしいくらでも後悔したっていいんだけど、なんかこう、このとき振り返らなかった黒尾と、それに笑って応えただろう赤葦がとてもいとおしい。
赤葦、誕生日おめでとう!
This fanfiction is written by chiaki.