惜春の幽霊シリーズ *notes
惜春の幽霊シリーズを読んでくださってありがとうございました!
やっと言いたいことも言える状態になったので(笑)、蛇足的なことなどを覚書として、自分用にも書いておきます。
あとは、本文には書いてないけど知ってるとしっくりくるかもしれない設定とか、言い訳というか分かりにくいとこの補足など……(汗)
まだ本編を全部読んでない方がいらっしゃいましたら、ネタバレになるかもしれないのでお気をつけください。


・家康が三成を“首を絞めて”殺した、という設定にしているのは、三成を討つと決めたときから自らの手を汚すことを決意していた(らいいなと思った)から。好きだからこそ、家康なら三成の死を自分で引き受けるんじゃないかと。コミックス版のエヴァでシンジがカヲルを殺すときと同じように。

・生まれ変わりの自覚について、家康は若干後天性で、ほかは先天性というイメージで書いています。
家康は、三成を殺したときの記憶が最初抜け落ちているせいで、自分が生まれ変わりだと知っていてもどこか“徳川家康”に一致しない。後に三成と再会したときに記憶が全部戻って自分は“徳川家康”であり、転生した家康だと思うようになります。そのせいで最初の方は、三成を殺した張本人だというのにどこか他人事な雰囲気。
三成、鶴ちゃん、佐助は先天性なので、生まれ変わったその日から転生した者としての自覚があります。氏政はそもそも前世の記憶がなくて、これからも戻ることはありません。風魔は……どうかな??記憶があるのかないのかはっきりとは決めていません。ありそうだなと思ってはいますが。

・この話の前世の設定は、4の家康が三成を生かすために、自分が秀吉を討ったと嘘をつくルートからの→3の家康・赤ルート(関ヶ原で家康が三成を討つ)のつもりで書いています。
なので、家康が秀吉を討ったわけではないのにそのことを三成はまだ知りません。でも家康は今さら、というか、一度自分が引き受けたものなので今後三成に真実を言うつもりはありません。秀吉を討つつもりだったのは本当なので、言い訳する気もない。
そのことを三成が知っているかは、うーん、どうかな、「罪と花」では三成は言葉を濁していましたが、なんとなく勘付いているかもしれないし、まだ知らないかもしれない。

・佐助は、前世で幸村の盾になれなかったことだとかも合わせて、幸村の居場所を奪った家康を逆恨みに近く嫌っています。「罪と花」のときも、実は喫茶店にいたけど出てこなかっただけかもしれない。顔なんかみたくないねって感じで。
三成を構うのもほんとに暇つぶしで、生きていること自体が退屈といった感じで日々過ごしているのですが、もし幸村がこの世界に転生していたらという万が一の可能性を考えると全部を諦めることさえできない。話の中でいちばん前世に囚われているのは佐助だったりします。タバコを吸うのも好きとか嫌いとかじゃなくて、時間が潰せるから。ただそれだけ。
喫茶店のバイト代は幸村に縁のある場所を回るために使っています。ずーっと幸村のことを探し回ってる。
一応、幸村は転生してるんじゃないかなとわたしは思ってて、家康のことは恨んでないんじゃないかな。幸村ってさっぱりした性格だと思うので。たぶんそれは佐助も分かっているけれど、幸村に全然会えないから僻んでる。もし、佐助が幸村に会えたら歪んだ性格も随分直ると思います。(笑) あと、タバコもやめる。

・これをここで説明しないと分からないってどうなの……って思うのですが(汗)、家康が三成の名前を呼ぶの、実は最終話がはじめてだったりします。
幽霊に対して心の中で呼びかけたりということはありますが、三成と再会したあとはずーっと“お前”で通しています。それと家康から三成に触れたことも一回もなくて、どちらにも三成は気づいていて、「白夜風唏くひとびと」でようやく家康が三成の手を止めるために触れることになるのですが、不可抗力な結果だとを三成も分かっているので、「触れる」「触れない」の禅問答になる、といった感じです。
今世の家康も三成も互いに、名前を呼ぶことと、触れるということが特別だと重々分かっていて、だから家康は、三成を手にかけた自分がやすやすと昔のように出来ないと思っているし、三成は、前世ではあれだけ自分を求めた家康が今世で同じようにしないことをもどかしく思っていて、それと同時にその理由が家康が自分を手にかけたことにあるのだと、自分たちが非常に難しい関係になったことを思い知っています。
はー分かりにくいですねこうやって書くと。すみません。

・“神さまが縫い合わせた跡”は、今でも好きな尾崎かおりの『ピアノの上の天使』から。
・“手と手の皺を合わせて、しあわせ”ってCM、もう見ないですね〜 数年前までは見た気がするのに……

・今回のシリーズ、自分ではひそかに“文学名シリーズ”と呼んでいました。どれも作品の題名からつけています。
大好きだった同人作家さんいまして。先日『千年女優』見たんですよね。で、エンディングの作曲家さんが平沢進さんという方でなぜかすごく気になって調べたら、覚えていたその同人作家さんの本のタイトルが平沢進さんの曲からつけられたものでした。思いがけないことだったのでびっくり。もう随分前の本で手元にもないのですけど、こんなところで会うものだなあと思って。縁ってほんとに不思議です。
そういう、縁みたいなものがまたどこかで出来たらいいなと思って今回試みてみたのですが、一応題名をお借りした元の作品リストを。ってわたし、このほとんどまだ読んだことがなく。手元に持ってるだけのもある……ので、小説の内容が似通ってるってことはたぶんないです。
『爪先立ちて歩く幽霊』詩/佐藤春夫 これを元にした漫画(佐藤嗣麻子原作/岡崎武士作画)
『罪と罰』 ドストエフスキー
『白夜を旅する人々』 三浦哲郎
『百年の孤独』 G. ガルシア=マルケス
『たったひとつの冴えたやりかた』 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア


続きものを書いているあいだ、やっぱり見てもらえているということが大きな励みでした。
小説って読み手にもエネルギーがいる、ってまさしくそのとおりで時間をかけて見てもらう分、それに少しは応えられているものが書けていればいいなあと思いますが、何より、その時間を割いてもらったことがほんとうにありがたいなあと思っています。
ほんの少しでも、楽しんでもらえたらわたしもしあわせです。読んでくださってありがとうございました!

2014.7.18
This fanfiction is written by chiaki.